世界の舞台でコーチとして活躍する高石周さんが、スノーボードの上達に関する悩みから、環境の提案など、様々な角度からスノーボーダーの相談に乗ります。 今回は、フロントサイドスピン 腰を閉じる?蹴る?がテーマです。
質問者:k
こんにちは。
ここ最近自分なりにFSスピンをいろいろ見直してたのですが、
その結果最後のヒールエッジに乗る際に腰がfs側に少し開いてることがわかりました。
腰を閉じてやってみると、簡単に540以上回るようになったのですが、腰を閉じるといいのでしょうか?
閉じるとヒールに乗りすぎたりします。
うまい人のFSを見ていると蹴ってないひとも見ます。
自分は蹴れた方がいいと思っています。やはり蹴れた方がいいのでしょうか。
それとリップを抜ける際に徐々に肩が開く方がいいのか、それとも抜ける瞬間に肩を開くほうがいいのかも教えてください。
https://www.youtube.com/watch?v=XsvfT3uwoKI
以上、動画です。
bsとcabも入ってます。
動画拝見しました!
非常に良いスピンですね!
素晴らしいです!
これだけ回れて何が不満なのかわからないくらいです(笑)。
そんな中でも疑問を持っておられるようなので、一応「理論」だけお答えしておきます。
まず腰が早く開いてしまうという件ですが、腰が抜けのタイミングを待てずに回り始めているということですね。
腰が開いている状態では上半身と下半身に捻じれが生じている分、蹴りにくくなっていきます。
そして最初から開いている分、リップを抜けた後の腹筋の横方向への伸ばしが強すぎ、腹筋を使った下半身の引き寄せが非常に重たくなります。
例えば腹筋は真っすぐ胸を両ひざに向けて縮めるときに最大筋力を発揮しますよね。
ですから捻じるほど最大筋力を発揮しにくくなるわけです。
腹筋の伸張反射を有効的に使うには、できるだけ捻じれが少ない状態のときに筋肉を縮めることがコツとなります。
次に腰を閉じるとヒールに乗り過ぎるという件について。
これも抜けのタイミングを待てずに体がどんどんスピン内側に倒れていくということですよね。
倒れていくほど地面を真っすぐ下に蹴れなくなるので、蹴りにくい感覚は当然でしょう。
回転数を増やすほど、意識はこのようにスピン内側に持っていかれます。
回転軸内側ではなく、自分の頭の真上でぐるぐる回っているイメージを持ちましょう。
蹴らなくてもきれいに回る人もいますね。
いろんなケースがあるので一概には言えませんが、明確に蹴っていなくても、下半身を固定してジャンプ台が下から突き上げてくる力に対して、下半身を固定して突っ張ることで蹴ったことと同じ効果が得られます。
この場合体は倒れずに真っすぐ立っていることが重要です。
そして体の横回転は後ろ足がリップにかかった時に一気にかけるタイミングにすることで、開きすぎを防止します。
さらにタイミングを待った分上半身の回転は少ない角度に納まっており、早く腰を開いた時よりもその後容易に腹筋を収縮できます。(捻りが少ない状態)
しかし横回転の初速は腰を早く開いた時と変わらない、もしくはより速いので、回転速度は変わず、しかも下半身の引き付けが軽い分、空中では余裕をもって回るはずです。
この上でさらに蹴ったらどうなるのか?
蹴ることは足の筋肉&腹筋を縦に伸ばします。
ですから筋の伸張反射がさらに起きやすくなっています。
仮に横回転の捻じれ、つまり横方向への筋の引き延ばしが弱くても、縦方向にしっかり伸びていれば、その後の筋の伸張反射は十分起こり、さらに捻りが少ない分腹筋の収縮も容易です。
そうすると下半身は非常に軽く引き上がってくることになり重さをほとんど感じません。
ですから軽い上半身の捻りだけでスムーズにゆっくり回っていくことになります。
蹴る分滞空時間も生まれれば、回転がゆっくりでも十分回ります。
蹴ることはスピンにさらなる余裕を与え、そしてゆったり大きくみせることになりますね。
肩を開くタイミングですが、ゆっくり徐々に開いていくとおそらく腰もついてくるのでは?と思います。
筋肉の伸張反射で回る話をしましたが、ほかにもフィギュアスケートのように腕の回転を使うことも初速を得るために重要になってきます。
そう考えると肩は最後まで我慢して開かず、腕は蹴ると同時にぶん回す、というのが効率的であると言えます。
ちなみに上半身や腕はゴルフスイングするがごとくリラックスしている方が、より強い遠心力を得ることになります。
野球の素振り、空手の回し蹴りなども同じで、遠心力をいかに効果的に使えるかがポイントですよね。
以上を踏まえると、効率的なスピンの回し方はこんな感じになるでしょう。
1.タイミングを待つ
後ろ足がリップにかかるまで180や360のつもりで動かない
(余計な動きを抑制しながら上半身をリラックス)
2.蹴る
後ろ足がリップにかかったとき
(意識はランディング方向でなく真上へ)
3.腕をリラックスさせてぶん回す
蹴ると同時に真上に高く体を引き上げながらゴルフスイング
4.下半身を意識的に引き上げる
身体が回り過ぎる前に胸を前足の上にかぶせるように腹筋を意識的に縮め、足を引き上げる
5.ランディングに急いで板を回さない
ランディングぎりぎりまで体を勝手に回させる
こんなことを一瞬でやれと言っても簡単ではないですが、この中の動きを一つずつ体に覚えさせて、最終的にすべての運動が自然に行われるよう辛抱強く練習を続けてください!
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高石周(SHU TAKAISHI)プロフィール
新潟県長岡市出身。現在45歳。
1990年よりスノーボードを始める。1997年まで競技を続け、その後は育成の道へ。
2003年よりカナダのスポーツ専門学校でスノーボードプログラムの責任者を務め、2008年よりコーチングブログを始める。元ナショナルチームの渡部耕大、そして現在ナショナルチームで活躍する佐藤夏生など育成。その他、ビデオシーンで活躍する小川リョウキ、高尾翔馬など、日本を代表するライダーたちを育成して来た。
2012年よりコーチとして自立し、スノーボードコーチングプログラム「Snowboard Wiz」を発足。
ナショナルコーチング資格プログラム(NCCP)、カナダスノーボードコーチングプログラム(CSCP)など、カナダの各種コーチング資格を所得していて、そのコーチング・レベルはナショナルチーム・レベル。