世界の舞台でコーチとして活躍する高石周さんが、スノーボードの上達に関する悩みから、環境の提案など、様々な角度からスノーボーダーの相談に乗ります。
今回は、前回に「ブラシと雪の違い」の質問をされたhiroさんから、新たに「ゆっくり回す方法」についての質問に回答してくれます。
質問者:hiro
今日姿勢を高く、F180くらいのつもりでF360やったらだいぶ良くなりました!
またまた、質問なんですが、回転スピードを落とすにはどこに気を付ければ良いのでしょうか?
ゆっくーり回りたいです。10メートルサイズのキッカーで飛んでいます。よろしくお願いします!
スピンが改善されたようで良かったです!
さて、さっそくFSスピンにおける「回転速度を落とす」ことについて考えてみましょう!
まず大事なのは、(当たり前ですが)滞空時間を把握していることです。
よくありがちなのですが、みんな抜けばかりに意識が奪われて、この空中からランディングまでの流れのイメージができていません。
過去に何度も書いてきましたが、ランディングの形がイメージできていて、ただその形にはめるように飛ぶだけで、空中の運動のほとんどは改善されてしまいます。
つまりランディングまでの細かなことは考えずに、体を自然な運動に任せてしまうのです。
しかしその形にはめるまでの時間が計算できないと、空中での動きを急ぎすぎたり遅すぎたりします。
次に、技術的なお話。
滞空時間を把握した上で、ランディングに合わせる方法が2つあります。
①抜けで回転力を合わせる
②空中で回転をコントロールする
抜けの瞬間に回転力を滞空時間に合わせるのはかなりのスキルが必要です。
要するに滞空時間がこれくらいだから、これくらいのスピードでこれくらい飛んで、蹴る強さはこれくらい、上体の捻りはこれくらい。。。といった感じですね。
これを毎回びったり合わせられる人はいないでしょうね。
しかしこれを目指して抜けることはランディングをより安定させるわけなので、これは毎回考えてできることが好ましいです。
その上で次です。空中で回転をコントロールしましょう。
コントロールする方法も2つに分けることができます。
● 回転を引っ張る
● 回転を抑える
引っ張るというのは、抜けで回転力を抑えて、空中で上半身を回転方向へ引っ張るということです。回転力を抑える要素は「蹴り、上半身の捻り、腹筋のロック」です。
蹴りを弱くする?
上半身の捻りを抑える?
腹筋のロックを遅らせる?(詳細は先日の掲示板を読んでください!)
これらが回転力を抑える要素です。最も好ましいのはこんな抜けかと思います。
● 高い姿勢からしっかり蹴り上げる
● 上半身の回転は180のつもりで
● 蹴ってすぐ胸を前足のヒザへかぶせて
● 同時に意図的に強く腹筋に力を入れる
180のつもりではありますが、蹴りの強さと腹筋のロックによって360するには十分な回転力が生まれます。この後90度回ったところで目線を前足のかかと辺りを見ていればゆっくりと回っていき、さらにランディングも見えるので合わせやすいです。引っ張るというのは、このようにゆっくりとしかし強く上半身で回転を先導していく動作ですね。目線を送り、ひざに胸をかぶせることがこの引っ張る動作の基本です。この動作を滞空時間に合わせて強く、または弱く引っ張ることで「ゆっくり」な回転に見せることができるはずですよ。
次に抜けの回転力が強すぎた場合。
これは抜けが早かったり、蹴りも強い上に上半身の捻りが強かった場合などに起こりますね。
この場合も空中で回転をコントロールすることが可能です。ここも過去に何度もブログで書いてきましたが、回転力を落とす方法は、下半身(板、腰)が肩のラインを追い越すことで可能となります。簡単に言うと、上半身が下半身が回ろうとすることを邪魔する状態です。
つまり上記した回転を引っ張ることと逆のことをやれば良いだけですね。
具体的な技術はこうです。
● 空中で90度回った時点ではまだ目線をランディングにロック
● 180回ってもできるだけランディングに目線をロック(上半身と下半身が回転方向の逆に捻れている状態)
● 目線、肩はランディングまでテール側を向いて回転の逆に捻った状態を保つ
● 板をランディングに合わせたら上半身と目線を進行方向へ向ける
これでも回り過ぎそうであれば、ランディング前に空中で腰の回転を止めるように肩と目線をランディングに向けます。
つまり、まずは(板が180回った時点で)目線をランディングにロックすることで最初のシャッフルが入ります。
ここで板の回転力を弱めた上で、さらに回り過ぎそうな板を(180から360の間で)回転逆方向にシャッフルするように腰も逆方向に回します。結果、2度目のシャッフルが入って上半身はランディング側に向くことになるわけです。そしてこのままランディングします。
ここまでするのはかなり経験が必要ですし、ここまでやる前に滞空時間を計算した上で回転を引っ張りながら回転力を調整するほうが安全です。
また実験結果を聞かせてくださいね!
下記URLから投稿を確認できます。
http://6218.teacup.com/snbw/bbs