日本で売られている海外スノーボード・ビデオと言えば、チャンピオン・ビジョンズ。今回のインタビューでは、そこに勤めるロンちゃんこと清水諭さんの登場だ。
フサキ(以下F):ロンちゃん今回はよろしくね!
ロンちゃん(以下R):よろしくお願いします。
F:まずは、ビデオの仕事に関わったいきさつを教えてください。
R:そもそもインライン・スケートを趣味をやっていまして、
F:あっ、そうだプロ目指していたよね?
R:いえいえ、趣味程度ですよ。で、もともとその手のビデオ見ていたので、今の会社(チャンピオン・ビジョンズ)のことを知っていました。それで、情報誌を見て入った、というのがいきさつです。インラインが趣味で入ったので、当時は他のビデオに関しては、まったく知らない感じでしたね。
F:もともとビデオの仕事に興味はあったの?
R::映像のことは全然わからなかったんですが、新しいビデオをいっぱい見れたり、海外のプロとかに会えたりするのかなっていう安易な感じだったかも…。社会人っていうか、ちゃんとした仕事は初めてなので、入ってみるまでは何をしていいかわからなかったです。
F:今の具体的な仕事の内容は?
R:プロ・ショップさんとか量販店さんとかの営業です。あと、放送関係とか雑誌関係にも映像を紹介します。渋谷とか六本木とかの大きい街頭モニターにもCVW(チャンピオンビジョンズ)のビデオの映像が出てますよ。
F:へえ営業かあ、大変だね。でも、もう浸透したから、新規の営業とかは少ないの?
R:結構、お店の方から連絡をいただいて、という形が多いです。営業としては本当はすすんで電話とかしなきゃいけないんですよね。
F:今、このインタビューを見た人が、「うわあ、こんな仕事あったのか!」って来ちゃうかもしれないけど、もう枠はない?
R:今のとこはいっぱいいっぱいです。でも、事業内容によっては今後募集の可能性もあると思います。詳しくは人事に聞いてみないと…。すみません、はっきりしなくて。僕が入った時は営業の募集だったんですが、映像の編集を希望してきた人が多かったと聞いています。
F:編集なんて一番大変な仕事なのにね。あれは地獄だよ。
R::そうですね。でも、僕も最近は「撮りたいな」と思うようになりました。
F:仕事は忙しいですか?今まで聞いたスノーボードの仕事は、みんな忙しくてなかなか滑れないという面があったんだけど。
R:シーズンやリリース時期によってなので、波がありますね。例えば、スノーボードビデオはシーズン前がいいので準備は夏くらいからです。シーズン中はフォローが多くなります。その時期はロードレースの時期でもあります。ツール・ド・フランスとか。また、暖かくなれば、スケートボード等のストリートスポーツや、もちろんマリンスポーツもやらなければいけませんし。趣味の時間に関しては、それほど気にはなりませんよ。
F:ビデオについて教えてください。今、スノーボードのビデオってたくさんあるけど、どんな分類に分けることができますか?
R::どうなのかなあ。単純に競技もの、フリースタイルもの、フリーライディングもの、アルペンものとか、スノーボードのジャンルと同じようにありますが、結構、今の流れからするとフリースタイルとフリーライディングがメインです。特に、ここ1、2年はフリースタイル重視という傾向です。
F:例えばテクニカル・ディフィカルティーズとか見ると、飛び、カット、飛び、カット、というのが多いでしょ。
R::そうですね。それが主流ですね。ライダー的にもフォ-ラムのメンバーで注目が浴びていますね。後は、リバイバルというビデオがあって、それはM3がメインで、それと人気が二分しています。また別の路線で、TBシリーズというエクストリームがありますが、日本とイメージがかみ合わないという部分もあるんです。
F:へえ、イメージがかみ合わない。それはおもしろい発言だね。どういうこと?
R::アラスカのヨハンのライディングは凄い!というのはあるけど、日本の視聴者が、まずアラスカの実感が沸きずらいんじゃないですかね。すっごく面白いビデオなんですよ。映像のクリアさとか、撮る絵とかは他を寄せつけないです。フリースタイルも面白いし。
F:ということは、ちょっとエクストリーム系が売れなくなってきている、ということか。
R::少し弱くなってきているかもしれません。でも、長年やっている方とかは、フリースタイルの傾向が、結構飽きて来ているというところもあります。ビデオの中のトリックが凄いっていうのはみなさん思うみたいだけど、トリックうんぬんよりも、その人のスタイルのが重視されてるんでしょうかね?お客さんから聞いたりするとそう思います。
F:昔のスノーボードのビデオとか見ていると、バートンのビデオとかクレイグが出ているやつがあったよね。そういうの見ていると、追いかけの映像とか、それこそしつこいくらい同じようなシチュエーションを違う角度からおもしろく見せている、といのがあった。今のビデオの好きでないとこは、1つの場面で1つのアングルで見せているだけだけだから、心に残らないというところ。昔のビデオとか見た後は、フリーダム唄いながらスノーボードに行っちゃうみたいなところがあって、そのへんがひじょうに、寂しいと思うけど。
R:そいういうのは、減っている傾向ですよね。やっぱり、それは滑りよりもフリースタイルのトリック的なことがよりクローズ・アップされていて、凄いトリック見せるということが強いんだと思います。
F:1999を見ると、トリック系だけどTheEnd(注釈:昨年発売されたスケートのビデオで映画のようなストーリー調になっている。かなりの傑作なので、ぜひ見てほしい!)の流れでストーリーがある、という部分があるよね。ああ、いう流れは新しいのかな?もともとあったのかな?
R:いや、古い感じがしますね。余分なおもしろいシーンとか、プロ・ボーダーに演技とかさせていて。今はそういうのは省かれていますから。
F:そう言えば、昔、ケンパーのやつとかであったあった!
R:なんて言うんですかね。ウィスキーシリーズとかも、カナダディアンとかバカをやっているシーンがたくさんあって。裸になったり、ケンカとか、吐いてたり、頭でビール瓶割ってたり。昔のスノーボーダーって悪いやつというイメージでしたが、今はそれはなくなってクリーンになったような感じです。いいのか、悪いのかはわかんないですけど。
F:最近、日本でもパソコンの技術が上がったということもあり、ビデオを作る連中というのは増えたと思うけど、そういう連中にアドバイスありますか?
R:うーん、結構見ると、テクニカルを作ったマック・ダウ・プロダクションの影響を受けた撮り方をしているんですよね。ローカル色を出して撮ったのはいいと思うけど、あんまり真似よりはオリジナリティがある方がいいと思います。あと、構成っていうのはやはり大事で、制作者のセンスが出ますよね。ハイボルテージ(1999の制作会社)は昔はあまりパッとしてなかったですけど、でも今回は面白かったですね。マックダグにしろ、スタンダード(TBシリーズ)にしろ、非常にクリエイティブですね。曲の盛り上がりとライダーの最高のトリックが重なっていたりとか、曲の切り替わりとか、つなぎとか、頭の中で練り上げられているような。
F:うーん、なるほど、です。ところで、ちょっと怖いなあ、と思うのは、映像ってエクストリームを見せないと受けないという部分があるよね。だけど、現実にはそれを撮るためのライダーの経験とか、下準備がいろいろある訳だ。だけど、それを見た連中は、自分もできると思ってしまう。事実、死んでしまったケースとか聞くと、今後ビデオはそのへん何かやるのかな?と思うんだけど。
R:みなさんが見る一カット見るために、それこそいろいろやっているということを知ってほしいです。だけど、ビデオの中でもクラッシュ・シーンとか見せて彼らかも危険性も訴えているようにしていると思います。CVWとしてもその影響力は心配しています。ビデオでどうこう言えるのかはまだ分かりません。気難しいビデオを流しても、みんなはあまり興味を持たないだろうし。雑誌で、プロデューサーのインタビューとかいっぱい読んで欲しいですね。どういった中で撮影をしているのか、知って欲しいです。例えば、TBシリーズのエクストリームのシーンなんかはアバランチが一番恐いから、山の写真をまず見て、どのラインを滑るかチェックして、さらに滑っている時もヘリとの無線で随時連絡を取っているし、山の知識は当然ある。そういった勉強をした上で、不可能に近いライディングをこなしてるんですよね。TB6ではユハ・テンクのクラッシュが話題になりました。ヘリで運ばれていくシーンなんかも、重々しかった。その時の様子をユハがビデオの中で「バカなことをした」なんて語っているし、そういうのは結構効果があるんじゃないですか。
F:それで思い出したけど、クリス・ダフィシィ撮影中にケガしたよね。
R:そうですね。彼を始め、多くのライダーが今シーズンのビデオでもヘルメットをかぶって、安全への認識を植え付けた功績はあると思います。ケガのことはひじょうに残念ですね。
F:今後のビジョンは?
R:国内のビデオを逆に世界に出していきたい。やっぱり、おもしろい映像であればどんどん紹介できるので。
F:実際に持ち込む人いるの?
R:いや、まだあんまりないです。どんどん持ってきてほしいです。
F:うわっ、そんなこと言ったら、みんな送ってきちゃうぞ。北海道の小松くんとか松井くんだっけ?ルート230ってあれも持ち込みなの?
R:そうですね。そういうお話をいただいて。
F:彼ら燃えているよね。実際。お店とか出て無料でバイトして売っているんだよね。
R:ええ(笑)、凄いですよね。
F:ロンちゃんの個人の夢を最後にどうぞ!
R:のんびり生活できればいい、って、あまりビジョンが浮かばないんです。こういう仕事にもついたので、写真やビデオでいろんな映像を撮っていきたいです。それでいつかまとめあげることができたら良いと思ってます。
編集後記:
のほほんとしたなかにも芯がしっかりしたロンちゃんという印象を受けた。初めてニュージーランドで会ってから、4、5年が経ったのだろうか。この歳月の間にロンちゃんはいろいろ苦労しながらも、今の地位を築き上げたのだ、と実感した。