これはグッドアイデア商品!
プロテクターギアでお馴染みのeb’sが販売しているPALM PADは、ガチガチの手首プロテクターが苦手なボーダーに最適だ。
ライダーの広野あさみのインスタ投稿によれば「ガチガチのプロテクターはちょっと動きずらいからあまりつけたくない、そんな方に向けて少しラフなプロテクター付きインナーを@ebsmissionに作ってもらいました!」と書いてあるので、どうやら彼女の発案で誕生したプロテクトギアのようだ。
ちなみに記者は、おそらく世界でも最も早くスノーボードギア作りに携わり、以前、CCC Designというブランドのアドバイザーをしていた。
そこの職人であるデザイナーの佐藤さんは、元々アイスホッケーや競輪選手のプロテクターを作っていたプロのサポートギア作りをする方で、その方が作ったヒッププロテクター、ボディプロテクターは本当にたくさんの方に喜ばれた。
佐藤さんは引退され、その後、誰もその仕事を引き継ぐ方がいなかったので、そのブランドは消滅してしまったのだが、正直、今でも時々お問い合わせが来るので困ってしまう。「CCC Designのプロテクターどこで買えますか?」という類のお問い合わせだ。もうなくなって10年以上も経つのに…。
それはともかく、そんな佐藤さんがどうしても作りたくなかったのが、手首のプロテクターである。
当時、佐藤さんのビジネスパートナーが奈良にいて、その方は佐藤さんの会社とのれん分けのような形で同じブランドのスノーボードのプロテクターが作って販売していた。その方は、職人気質の佐藤さんよりも、儲けのバランスも優先するビジネス思考の方で、世界でも初のスノーボード用のプロテクターを作ったのである。
スノーボードをする方は、誰もが知っているが手首の保護はひじょうに重要だ。
多くのスノーボーダーの怪我は、手首の骨折などの負傷である。致命的な怪我としては、背中(特に下部、ヒップ付近)もあるのだが、大雑把に言ってしまえば、頭と手首さえ保護すれば、だいたいスノーボーダーはOKだ。
そこで、佐藤さんはその奈良の方が作ったプロテクターを思考錯誤して何度もアップグレードした商品を出そうと試みたが、結局のところ出さなかった。ひじょうに職人気質の方で、自分が納得しないと商品化にしないのである。当時、工場兼用の職場内に切れ端のパット材を持って来て、手首付近に当て机をドンドン叩いていた。「そう、こんなもんでも結構、プロテクトができるんだけどねえ…」とつぶやいていた。実際に自分も同じようにやってみると、たしかにプロクトしてくれる感覚があった。「じゃあ、佐藤さんこんな感じで、さっさと作りましょう!」と背中を押し続けたものだが…。
すでに作ってしまった手首のプロテクターは、「プロテクターと呼べない。仕方ないサポーターと呼ぼう」ということで、販売していた。オーダーが入るたびに、不幸せそうな佐藤さんの顔を思い出す。
佐藤さん曰く「手首のプロテクターをしっかり作れば作るほど、その上の肘に負担が掛かる。肘の怪我は厄介で、手首を折った方がマシ」ぐらいな感覚があったようだ。だから、その補強バランスを考えていたのだと思う。その結果、自分でイメージしたものが果たして商品として出していいものか、迷っていたようなのだ。
そして、今回、広野あさみの投稿コメント「ガチガチのプロテクターはちょっと動きずらいからあまりつけたくない」を読ませてもらって、「おーお、これは良いアイデアだ!」と思ったのである。
この手首のプロテクターを今、佐藤さんが見たらどんな感想を抱くのだろうか。
「そうか、こんなアイデアがあったのか!」と言うかもしれない。
そう言えば、昨シーズンにビッテリーターンをした時、雪上にちょっとした障害物があって、手首を持っていかれてヒヤッとしたことがあった。
ちょっと間違えれば、骨折しそうなほどスピードを出していて、そんな時にもこのようなパッドがあれば防げるだろう、と思った。そう、これくらいの保護でちょうどいいんだと思う。
初心者は手首の骨折が多いから役立つだろうし、上級者でも雪上に手を付けて高速ターンした時にもこのPALM PADが役立ちそうだ。