【コラム】熟成されたスノーボード業界へ

文:飯田房貴

先週末、カナダではターキー・セールで国をあげての安売りがありました。この時期、サンクス・ギビングという日があって、ようはカナダに最初が誰かが来て(誰だろう?)このカナダという国がスタートした感謝すべき日。ちょうどこの時期には、家族でターキーを食べるのが慣わしで、同じ時期にターキー・セールと呼ばれる安売りがあるのです。アメリカのサンクス・ギビングは、11月の終わりだそうで、よくカナダ人は「よくアメリカ人はクリスマスとかなり近い時期にターキーを2回も食べるよな」と言います。
(写真右、ターキー・セールの新聞チラシ。BURTON、SALOMON、SMITHなど知られた有名ブランドのみ並ぶ。いかにもバッタものが1つのナシ!)

まあ、そんなことはどうでもいいのですが、各ショップ気合いの安売り合戦。特にこれから本格的なシーズンが始まるスノーボード・ショップは、このチャンスに在庫を一斉に処分してしまえとばかりに、70%引きなど購買者を喜ばすチラシの数字が並んでいます。日本でもよく安売りがありますが、1つ違うところと言えば、カナダでのチラシには、すべて一流メーカーが並んでいること。日本だと、スノーボード業界にいる人間でさえ「これ、どこのメーカー?」というわけのわからないバッタもの(?)がありますが、カナダにはあまりそういったブランドはないのです。

もちろんカナディアン・タイヤとかカナダの大型生活チェーン雑貨に行けば、いかにもバッタものを主張したスノーボードもありますが、普通スノーボード・ショップに行けば、わけのわからないメーカーは一切なく、また大型スポーツ・チェーン店でも、そういったブランドはないように思われます。

一時期スノーボード・バブルと言われている時代、何でもかんでもスノーボードなら売れるぜ!とばかりに、変なデザインものがよく売れました。性能なんて関係なく、とんでもない変なデザインもの例えばコンドームの絵柄のスノーボードとかよく売れました。ちなみに実のところ、そのブランドは結構、有名なスキー・メーカー向上で作っていたので悪くなかったのですが、ちょうどその時期にわけのわからないコンセプトもへったくれもない、ただ儲かればいい!という勢いのブランドが多かったと思います。

さすがに、今ではそういったブランドは淘汰されて減りましたが、未だに神田とか歩いていると見たことのないようなブランドがあって、かなり疑わしい。もしかしたら、無名ながらにきちんと作っているのかもしれないけど、一応長年この業界にいる僕はそのボードから出るオーラというか匂い(?)ともかく、スノーボードを本当に楽しんでいただこう、というメーカーの意図が伝わらない商品があるものです。僕の言わんとしていること、なんとなくわかっていただける方も多いと思います。

実際、僕も安いバインディングを売りに来たオジサンを見たことありますが、そこのメーカーの考え方というのは、「いかに一流メーカーのいいところをパクッて、安く作るか」というのがコンセプトで、そこには実際にユーザーがそのバインディングを使って、楽しいスノーボーディングをしている姿を微塵たりとも思い浮かべていないように思われました。とにかく、中国あたりの工場で、うまい具合にラジェットなどの部品を集めて安く作ってやろう、という感じだったのです。

ある意味、その考えにも同調できます。というのも、スノーボードをやりたくっても高いお金を出して買える余裕はない人だっているだろうし、もしそんな時に19800円でボードとバインディングを変えたら、とても素敵なことだと思うのです。一流ブランドでなくても、十分にスノーボードの楽しさを感じれることができるのだから。そういった意味では、無名ブランドはある意味の功績を果たしたと言えるでしょう。

だけど、長い目で見た場合には、様々な弊害もあります。
本当にユーザーの気持ちを理解しようとしてスノーボードを制作しているメーカーが、バッタものにマーケットを食われるし、バッタものを売る店がバッタもの精神で商売をしていて、きちんとユーザーのフォローをしていないケースも多いと思います。そうなると、せっかく縁あってスノーボードを始めたのにすぐに投げ出してしまう人も多いに違いありません。実際、ある調査では「スノーボードを1日やっただけで終わってしまった人」というのが、多いそうです。
バッタものの行き先は売れなくなればレンタルなどに行き、これだけスキー場が多い日本で一見スノー・ビジネスが確立している国が、最悪のレンタル商品を扱って、多くのスノーボーダーたちの夢を壊しています。言い過ぎかな?

いい商品といい製品は違う。いい商品とは売れている製品である、とマーケティングの世界では言われることですが、その基本となる製品が悪いものであれば、その製品は例え売れていい商品になっても、短命で終わるし、業界にとっては害虫の存在でしかないでしょう。作る人が別にスノーボーダーの楽しさのことまで想像することはないかもしれないですが、せめて「あの冬山に行くバカ野郎たちのために、喜んでもらえるものを作ってやるか」と考えてほしいものです。実際、そうしないとビジネスには発展しないでしょう。

これからネット時代になり、どんどんユーザーがスマートになって行く中、いわゆるバッタものは減って行くのだと思いますが、そろそろ日本のスノーボード業界もより成熟して行き、強い業界へ発展して行ってものです。そして、スノー・ビジネス・カントリーとして確立して、歴史ある欧米にも負けない成熟したスノー業界、スノーボード業界を作っていただけたら、と思います。そのための第一歩が本当にユーザーに喜んでいただける商品をすべてのメーカーが作り、競争すること。そして、もちろんレンタルでもスノーボードの楽しさを十分に伝えることができるスノーボード用品を扱うことです。