【コラム】プロになってから食う方法

文:飯田房貴

日本にはスノーボード協会というのがあり、そこでプロの認知をしている。プロになるための基準に関しては、あまり細かいことはわからないがアマチュア全日本大会の上位者のようである。しかし、これはあくまでも日本で作られたスノーボード協会が認知したプロということだから、世間のイメージにある「プロ=食っている人」というのとは違う。自分の知る限り、多くの公認プロは日頃、スノーボード・プロ活動以外に関係ないアルバイトを行い、低所得者(の人が多いと思う)として過ごしているのが現状だ。

時代が良かったら、彼らももっと楽ができたと思う。自分がよく知るプロ・ライダーたちも市場さえ広ければ十分にもっと活躍の場を広げることができるだろう。しかし、スノーボードの市場はイメージとは裏腹に狭いのが現状。いくらスノーボードがうまくて人々に多くのことを伝える力があっても、なかなか良い機会に巡り合えない。

もちろんプロでも十分に食っている人はいる。年間1千万円単位の契約金をもらっているライダーだっているのは確かだ。しかし、そういったプロはほんの一握りだけで、多くのプロはスノーボードだけではなかなか食べて行けないのが現状だ。そして、その食えないプロというのは、 20代から30代前半というところ。

ここで自分なりにプロを2つの層に分けてみたい。1つは 20代前半の層、もう1つは20代後半以降の層だ。20代後半の層は比較的に良い時代も味わった層でもある。90年代後半のスノーボード・バブル時代をかじって、イケイケの時代もあった可能性がある人が多い。そこでかなり良い思いもしながらも、ここ数年食べて行くのに大変な状況。将来に対して不安を抱いているという層だ。

20代前半の層というのは、比較的に決められたレールで育ったお坊ちゃんライダーたちである。すでにスノーボードのスタイルも確立され、また上達方法やプロになる方法まで、ある程度のマニュアルがあって育った層だ。高校から大学に上がるエスカレーターにように、正当な努力をしてプロになったというイメージ。いろいろ新しいことをやろうと試みている人もいるようだが、どうも結局は先人に作られた枠の中でジタバタしている感じである。性格も良いライダーがいるのもこの層の特徴で、良い意味でも悪い意味でもお坊ちゃんだ。もちろん将来に対する不安もあるだろうが、年齢も若いこともあり、それほど深刻に考えていないように思える。

対して、海外のプロ・ライダーというのは、どうだろうか。
スノーボード協会のプロというのはいなくて、ここではまったくの実力者主義。日本の肩書き主義とは違って、プロという名に甘んじていない人がほとんどである。それはそうであろう、ともかく何かやらない限り飯を食えないのだから。その方法とは、ビデオや雑誌に出て自身のスポンサーをPRして、そこから報酬を発生させるという至ってシンプルな方法である。そんなサバイバルな環境のせいか、いや国民性の違いだろうか、ビジネスに関する意欲も日本人ライダーよりも一際高い。だいたい感覚的には 10年早いと思う。

例えば、最近トレバー(アンドリュー)がキャップか何かのブランドを始めたというが、彼はまだ 25歳。この年齢ですでにビジネスのことを考えているのである。まだまだ有名ライダーの域なのに。
昨年春に出合ったネイト・ボーザンなんかも、まだ 20代前半であろう。それでキャップやアパレルなんかやっている。
グローバル・インタビューに登場したマット・チャンバリンは、プロ・ライダーではないが 21歳ですでにアパレルをやっている。この辺は国民性というところか。
また最近、親交がある STEP CHILD(ボード・メーカー)及びPROMO COPY(ビデオ)を製作しているショーン・ジョンソンも30代前半であるが、20代でLAMMER全盛時代のトップ・ライダーになり、そのままフイルム(撮影側)の活動を続けた人物だ。
はっきり言って、海外にはこういう元ライダーのビジネス発起人がとても多く、日本の比ではないほどだ。

日本はどうだろう。思いつくところでは、ライオのコア・チームと RED EYES(ビデオ)活動、小川マサトくんのカオス(ビデオ)、最近では忠くん(布施)と崇くん(西田)のメイビーエム、あとはヤスくん(佐藤)のファーストチルドレンやユキエちゃんのリルなど、まだまだ少ない。この中でもヤスくんの活躍は目覚しく、以前にウィスラーのコーヒー屋で話した時、もっと親身になって相談に乗れば、自分も何らかの恩恵を受けたかな?(笑) なんて思うけど後の祭りだ。

話は脱線しそうになったけど、ともかく最近は、いろいろプロ・ライダーとお酒を飲んだり、お茶を飲んだりする時には、そのライダーの特性を活かしてアドバイスをするよう試みている。 自分自身がまだまだなので、うまくアドバイスができない時もあるが、自分の知る知識をわかりやすく伝えて、またその意見が彼らライダーに良い展開をもたらすように伝える。最終的にどう選択するかは、そのライダーの気持ちしだいだが、時には参考になったこともあっただろう。

ここで自分なりに思った提言をここでしたい。
まず、最初の提言、「勝手に自分でできることとできないことを決めるな!」

よく雑誌でハウツーの仕事をするが、今、僕がやっている仕事もプロ・ライダーでもできることは多い。撮影する時は、大抵こちらから「なになにくん、最近こんなハウツーないから、ぜひこういう形で伝えよう!」という提案や、直接雑誌社からの提案によるものが多いが、本来プロ・ライダーたちにも十分提案できることである。人間は元々本を読む動物だから、執筆にしても訓練により誰でもできるような気がする。だから、企画も含めて執筆の仕事もやってしまえばいいとも思う。

唐突だが、高正が偉いと思うのは、彼はキャンプの仕事を一切自分でやってしまうことだ。例えば、毎年恒例のパイプ・キャンプなんかは、宿のことから、リフト券の交渉など、まるでツアー・コンダクターの仕事までほとんどやってしまう。さらに細かいところでは、キャンプ現場の音源の手配や、スポンサーからの協賛品の手配までやってしまうのである。こうした仕事というのは、自分の仕事でない、と思った矢先に1つの線引きができてしまう。枠を決めてしまうのは、自分の可能性を否定するものだと思う。
よく、dmkのパイプ・キャンプは安いね、と言われるけど、こうして高正がいろいろやってくれて、余計な人件費を掛けないというのは大きい。結局、安くした分、キャンパーも来ていただき、こちらも高正に気持ち良く報酬を渡せ、キャンパー、高正、dmkの3者がトリプル勝者状態になるのだ。改めて言うけど、こうした3者が勝者になる背景には、高正が自分の可能性を否定せずに、新しい世界にチャレンジする勇気があったからだ。 プロだからやりたくない、と思った仕事もあっただろうが、逆に自分の冠で行うキャンプだからやったことのないことまで行った。その結果が良いキャンプになった、ということ。

次の提案としては、「自分の5年後を考えろ。」
これはひじょうに難しいが、特に若い世代のプロに言いたい。「お前は今の調子でやって行き、5年後、どんな状態にあるのか真剣に考えたことがあるのか!」と。
そんな偉そうなことを言う自分も、きちんとしたものがそれほどあったわけではないが、常に未来像を頭に描いて行動して来たのも事実。その結果、今の状況にあるのだ。今でも5年先にどんな自分でいるかということも考えている。そして、そういったイメージ像がある限り、仕事をすることや勉強することも楽しさになる。
凄く極端な話、今、自分が5年先のことをイメージすることができなくても、考えることは大切だと思う。なぜなら、考えてみたら、そこに飛躍のためのヒントが必ず出て来るからだ。自分が将来の理想像を作りたいと働きかければ、日頃見逃してしまいそうな些細な出来事に対して注意を払える。実を言うと将来に自分にとってとても大切なことであったりすることに気づく。もしかしたら、今、あなたの目の前に将来の大ヒントになることが、あるかもしれない!

振り返れば、自分の人生は肩書きとは反比例のような世界だった。
カナダで勝手にプロ登録して、大会には出たけど、後はまったくの実力主義でメディアへの活動をして来た。もちろん、そういったことを教えてくれる先輩や導いてくれるプロデューサーの方もいたのも事実であるが、自分の企画力と行動力がなければ何も起きなかったと思う。実際、今、専門誌に出ている自分は何なんだ、とも思う。まったくプロでもない自分が、ハウツーであーだこーだと語っているのだから。そして、気づいたらカメラマンもやっていて、執筆業もやっていて、このようにwebサイトも運営していて、ビデオなども作っていて。目の前に何かチャンスあったら飛びつく自分は、スノーボード界の商社マンか、いやヤクザか!? ともかくチャンスが転がっていたら躊躇せずに拾うのが、自分のスタイル。

常に新しいことをやる時は、わからないこともあったけど、冒険好きということもある。例えば、今でももっと日本全国に浪人ビデオを広めたくて、ダメ元でレンタルビデオ大手会社に企画書などを送る。また、以前はスノーボード人形制作のため、おもちゃ会社3社に企画書を送ったこともあったことを思い出した。ボツになっても気にしない。ボツの理由を考えて、またそこから考えればいいのだから。

ちなみに浪人ビデオに関しては、全世界のスノーボーダーに売りたい、という目標がある。だから、そのためにどのように世界のトップ・ライダーたちと交流できるか、ということも考える。このビデオでよりスノーボーダーが増えて、またスノーボードをやっている人が永遠に楽しむことをしてくれたら、素敵なことだから。そういったことは直接、儲からなくても回りに回って、自分にも返って来るものだと確信している。現に自分は、常に「スノーボード業界のため良かれ」と思ったことを実施して、今、食えているのだから。 ともかくスノーボーダーにとって「良し!」と思ったことは、自分にとっての哲学、生き方だから実行する勇気が持てるのだ。

もし、誰かが「フサキさん、スノーボード界で頑張っているね」と思ってくれたとしたら、それはありがたいことだけど、同時にこうも思う。「あなただってできるよ。不器用な自分だってできたのだから。ただ、思ったことを素直にやるんだ。新しい世界に入ることに恐れることはない。だって、新しいことをやるから生き残ることができるんだ。そこにいても、衰えて行くんだよ。いつかは死ぬしかないんだ。だから、新しいことをやって失敗すればいいだろ? 人生冒険なんだから。それでわかるまでやればいいじゃん!勝つように研究すればいいんじゃない? なんとかなるさ。日々、行動して努力を怠らないルールを作っていたらね!」