【コラム】カタログから見る世界のスノーボード

文:齋藤 稔

06/07のカタログを見ていておもしろいことに今さらながら気がついた。各国というか地域ごとにスノーボードのトレンドがまったく違うのである。当然と言えば当然のことなのだが、これが実際にライダーの滑りを見なくてもカタログを見るとわかってしまうのだ。さて、そのトレンドとは。

北米

まず現在のフリースタイルの最先端を引っ張る北米。ここのブランドの多くはフリースタイルに特化していたり、バリバリのフリースタイルを売りにしているブランドが圧倒的に多い。ちょっとあげてみるとGNU、RIDE、LIBtech、BURTON、STEPCHILD、OAKLYなど。ボードブランドの多くはトップライダー=フリースタイルのトップ(コンペ系、ビデオ系問わず)となっていてブランドの顔もGNUのダニー・キャス、BURTONのショーン・ホワイト、LIBtechのトラビス・ライス、STEPCHILDのシモン・チェンバレンという感じでトリックを華麗にこなすライダーが多い。

BURTONに関してはすべてのスタイルがあるではないかと言われそうだが、アルペンは数年前にラインナップから姿を消したし、ボーダークロスで使うようなギンギンのスピードマシンはラインナップされていない。OAKLYもゴーグルブランドからウェアを含むトータルブランドになりつつあるがサポート選手を見ればその傾向がはっきりとわかる。スノーボードのハーフパイプでは数多くのライダーがサポートを受けていたが、アルペンとスノーボードクロスではほんのわずかなライダーがサポートを受けているに過ぎない。ましてやこれが同じウィンタースポーツのアルペンスキーとなると・・・。

北米でのスノーボードの位置づけはスケートボードなどと同じで若くてアグレッシブなスポーツとなっているのではないだろうか。スケートの世界ではリアルストリートといって実際に街の中の階段を飛び越したり、手摺を滑ったりというのがある。ここはスノーボードのジブ系にあたるとみていいだろう。ハーフパイプやパークというのはもちろんスケートから来ているのは言うまでもないこと。つまりメインはパークでのアグレッシブなフリースタイルで、トリックをすることがスノーボードというイメージが一般的に思い浮かぶ。カタログを見ても圧倒的にトリック系のモデルが多いのはこういうバックグランドの影響だろう。

欧州

対してスキーで圧倒的な歴史を持つ欧州ではどうだろう。欧州の有力ブランドと言えばSalomon、ROSSIGNOL、Volkl、F2などがあげられるだろう。これらのブランドのカタログを見るとすぐに北米とはテイストが違うことに気がつく。それはフリーライドモデルの充実具合だ。Salomonでは基本的な設計思想に「フリーランがきちんとできなければならない」というのがり、実際契約ライダーも「実はジブとかは本来得意な板ではないんだけど、基本がしっかりしているから何にでも対応できるんだ」と発言している(もちろんジブなどにも対応したモデルもあり)。ROSSIGNOLではフリーランのためのラインが存在し、06/07ではジェレミー・ジョーンズをメインキャラクターとしたフリーライドモデルがひじょうに充実している。Volklもしかり、F2に至ってはアルペンのイメージが強いし、事実世界で勝てるアルペンボードを市販してるトップブランド。またSalomon、ROSSIGNOL、Volklはスキーを母体とするトータルブランドだ。

大会などでも欧州の選手はひじょうにバラエティに富んでいると言える。ハーフパイプで活躍するアンティ・アウティ、マルク・コスキのフィンランド、アルペンでは無敵のスイス陣、テリエも北欧ノルウェーイの出身だ。スノーボードクロスでは現在は国の力と言うよりも選手のポテンシャルで戦っている状態なので何とも言えないが現在の勢力分布は半々と言ったところだろう。

こうしてみると欧州ではアルペン・スキーの伝統が長く、リゾート地のゲレンデも広大な面積とスピードレースに対応した斜面等があり、欧州のスノーボードはフリーランを基本としたオールマウンテンなものが主流なのだろう。スノーボードで滑る基本的な部分をしっかりと身につけてそこからスピードだったりトリックだったりという部分を取り入れるのが欧州流とも見て取れる。カタログを見る限り欧州のブランドはアグレッシブなスタイルだけでなく、変化に富んだ広いゲレンデを楽しめるよう基本がきちんとしたモデルが基幹となっているブランドが多いようだ。

日本

では自分たちの日本はどうだろうか。実は日本も独自のスタイルを発展させている。国内の有力ブランドでは海外ではあまり見ない「基礎」というジャンルを定着させている。いわゆるデモ系というスタイルだ。これはアルペン、フリースタイルどちらのギアでも滑りを極めるというスタイルでターンの正確さや滑りの美しさ等を評価すると言うもの。いかにも日本人が好きそうなジャンルだが、世界的には癖のある滑りながらもトップクラスで戦うライダーもいるのでその実力は何とも評価しがたい面もある(実際にデモ系のライダーが他の種目で活躍している例はひじょうに少ない)

現在日本でメインとなっているのはグラトリとパークだろう。特にグラトリは世界でもトップクラスのテクニカルな技を自在に操るライダーもいるほどだが、世界的な認知度はどうなんだろう・・・? とにかく現状日本で売れる人気のモデルはずばり「ソフトフレックス」なモデル。世界から見ると柔らかすぎて頼りなく感じるほどのソフトなフレックスが人気なのだ。Japanフレックスを設定しているブランドではほとんどが日本では人気のないフレックスなのでグラフィックはそのままで柔らかく作っているとのことで、これはグラトリでしなりをうまく引き出しやすい、ボックスなどでコントロールしやすいなどが人気の理由であるようだ。

日本では広大な斜面を誇るゲレンデは海外に比べて少なく、斜度も緩い場合が多い。スピードを求めてかっ飛ばすにしても斜面も緩いし、コースも狭く短い。トリックを楽しむにしても日本のゲレンデはもの凄くきれいに整地してしまうので地形をうまく使ってとなるとなかなか難しい。そこでどこでも楽しめてリスクも少ないグラトリが浸透していったと考えられる。その延長としてパークがあるというわけだ。日本のゲレンデは海外からは考えられないほどパークの整備が行き届いていて、小さいゲレンデでも必ずと言っていいほどパークがあるのが特徴らしい。これはすでに整備されているゲレンデを今の要求に合わせて変化させるとこうなりました、という一つの回答なのだろう。

国内ブランドのカタログを見ると多くのブランドはソフトフレックスの扱いやすいボードがメインで力(資金力、ネームバリュー)のあるブランドはプラス・アルファとして競技モデル(パイプ、デモなど)が並ぶと言うパターンが多い。もちろん海外ブランドでも日本で力を入れているところはグラフィックが同じで中身の違うJapanモデルを作って対応している。

もちろんこれらのことは一般的な話で、実際はテクニカルな北欧ライダーやスピードに強いカナディアンなどいろいろなスタイルの選手が活躍している。日本でもハーフパイプやスロープで徐々に世界との差を縮めつつある。また最近の傾向からどのブランドもバックカントリーでのフリースタイルが最終目標、あるいはそれに近い形で存在していることも見て取れる。ビデオや写真でインパクトのある絵というのはどうしても人工的な物よりも自然の形を使った方が見栄えが良いからだ。そのため最終的にどのブランドもハイエンドモデルはオールマウンテン・フリースタイルという形で、どんな地形でもどんな雪質でも楽しめる、ライダーの力を100%引き出せるモデルを開発しようとしている。ただ、そのアプローチ過程で地域ごとのトレンドが色濃く反映されている。たぶんどのブランドも究極の一本は「これ一本で全部OK。中級からプロまで誰でも大満足」なのだろうがその道のりはまだまだ遠いようだ。

その地域で力のあるブランドのカタログを見ればその地域のトレンドを見て取ることもできるのは間違いないだろう。またこのような傾向は次に買うボードで迷っているのであれば自分のスタイルに合わせてある程度ブランドを絞るときに参考にできる情報だろう。フリースタイルを極めたいのであれば北米のテクニカルな滑りを売りにするブランド、滑りの中で遊びを入れてと考えるのなら欧州の基本がきちっとしたブランド、グラトリなどゲレンデを楽しく遊ぶのであればJapanモデルやJapanブランドという感じでおおざっぱに絞っていくことができるといってもいいだろう。

スノーボードを長く続けている人は自分の求める道具の形がリアルに思い描けるが、まだまだこれからの人はこういうことも参考にしてみてはいかがだろうか?