【ギア・コラム】アイ・ウェアー

文:ギア博士

基本的なことですがなぜゴーグルが必要なのでしょうか? 紫外線等から目を守るためならサングラスでもいいはずですし、サングラスならゴーグル焼けをしなくてすみます。その理由はクリアな視界の確保と目の保護のためです。スノーボードは転倒するスポーツです。これはどんなに始めたばかりの人からエキスパートまでスノーボードを一回でもやれば認識することです。サングラスの場合、転倒時に破損してしまいその機能を失うばかりか、最悪の場合は目に傷害を受ける場合があります。事実、僕がスノーボードを始めたばかりの頃なのですが、いっしょに行った友達が割れたレンズで目の上を切ってしまって速攻でゴーグルを買いに行ったことがあります。つまり安全性の面からもスノーボードをするときはサングラスよりもゴーグルのほうがメリットがあるのです。それでは具体的にどのようなゴーグルを選べばいいのでしょうか。

それでは具体的なゴーグルの役目は何でしょう? スノーボードにおいて視界の確保はひじょうに重要な要素です。進行方向に対して体が横を向いているため、視界は限られていますし、雪面の状況は刻一刻と変化し、その状況変化に対応するためには十分な視覚情報が必要となります。そこでゴーグルの機能として「曇らないこと」と「十分に広い視界を確保すること」があげられます。

「曇らないこと」はゴーグルをかけていれば誰もが思うことです。曇ったゴーグルのレンズは視界が全く確保できなくなり、ひじょうに危険です。曇ってしまってはどんなに高性能なゴーグルでも意味がなくなってしまうのです。そこで曇り対策としてダブルレンズベンチレーションの機能があるのです。

ダブルレンズは曇りにくい。これは誰もが自然に感じていることだと思います。2枚のレンズを合わせることによって間にデッドエアーがたまり、断熱効果が生まれるためです。肌の暖かい空気と外部の冷たく乾燥した空気がレンズ越しに触れると内側のレンズに結露が発生します。これが曇りの原因なのですが、2つの空気の間に断熱層を持たせることにより、この結露の発生が防げるのです。

ベンチレーションとはレンズの上部やフレームに通気用のスポンジ素材を配置することにより、ゴーグル内部の湿った空気と外部の乾いた空気を入れ換える機能のことです。どんなに断熱層があっても内部の湿度がある一定のポイントまで上昇すれば結露が発生し、ゴーグルは曇ってしまいます。そこで湿度を効率よく下げるためにベンチレーション機能があるのです。車も窓が曇ったときには外気を導入してガラスに吹き付けるようにすると曇りが早く取れるのですが、それと同じ原理です。

「十分に広い視界を確保すること」ですが、これは各メーカーとも独自のフレーム形状を作ることにより対応しています。同じメーカーでも何種類もフレームデザインがある場合は、それぞれにコスト的な問題と折り合いを付けるためだったり純粋にデザイン上の問題のためだったりします。

最近のゴーグルはサングラスと同じポリカーボネィト系のレンズを使用したり、人間の眼球のカーブにレンズカーブを合わせるなど、様々な試みがなされています。これらはすべてより正確な視界の確保のためです。

ポリカーボネィト系の素材の特徴は、その強度にあります。従来のレンズはアセテイト系ビュートレイトと呼ばれるの柔らかい素材が主流でした。この素材はゴーグルの柔軟性は確保できたのですが、柔らかいレンズのため表面の処理などに限界がありました。対して最近増えてきているポリカーボネィト系のレンズはレンズ自体の強度がショットガンの弾丸に耐えられるほど強いレンズです。この強さを利用して、表面の磨き上げや球面処理など高度な仕上げ行うのです。そのクオリティの高さの理由は製造過程にあります。アセテイト系ビュートレイトと言う素材は一枚のシートからフレームの形に合わせて切り抜いて製造していたのですが、ポリカーボネィト系のレンズはサングラスと同じように一枚一枚個別に製造しています。つまり個別に製造するためにレンズ自体の精度が高くなるわけです。その結果、特にアンチスクラッチ処理(摩擦による細かい傷対策)と表面の磨き上げなどは従来の素材の何倍もの精度でできるようになりました。そして人間の眼球のカーブとレンズのカーブを合わせる球面処理ですが、これは視線の焦点距離を狂わせないための技術です。スポーツサングラスの世界では早い時期から注目を浴びた焦点距離に関する技術ですが、ここ数年でゴーグルにも採用されるようになってきました。光はレンズを通るときに屈折する性質を持っているのですが、その屈折率をコントロールすることにより焦点距離を裸眼と同じ状態にするのです。これら技術の採用とフレーム形状の進化によりゴーグルを使用したときの周辺視界の歪みがなくなり、より正確な視界を得ることができるようになったのです。