ワールドカップNZ大会現地レポート 1,2フィニッシュで沸いた舞台裏の真実

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日本人の1、2フィニッシュでスノーボード界だけでなく、一般メディアまで大きな話題を振る舞いたニュージーランドで行われた男子スノーボード・ハーフパイプW杯。
戸塚選手、平野選手の表彰台は、日本中のスノーボード・ファンに夢を与えたが、一方、そこには見えていない舞台裏の真実もある。

平岡卓の後援会の会長で、長年、ワールドカップ、オリンピック大会を視察して来た山田 幸彦氏が、現地ニュージーランドでワールドカップ「生」観戦。これまでメディアが伝えて来なかったディープな内容レポートを自身のフェイスブックで発表した!

現地視察した関係者ならでの興味深いレポート。山田氏に許可をいただき、ここにリリース!!

Report & Photos: 山田 幸彦(HOOD,INC 代表)

今回、遠かったけど久しぶりで南半球のFISワールドカップNZ大会に、卓や日本チームを応援に行って本当に良かった。
昨シーズンはいろんな事があって、すごく心配した年だったけど、今こうやってワールドカップの初戦を迎えられ、これまでたくさんご心配いただいた方々、またチーム再編成に向けてご尽力いただいた皆様に本当に感謝したいと思います。

ちょっと長くなるけど、日本チーム全員の滑りを生で見てきた者として、僕なりにWC杯の決勝を振り返ってみました。
予選の結果は、すでにたくさんのNEWSやSNS等で発信されてますので省略させてください。

 

優勝した戸塚選手に有利に働いた点とは?

さて、決勝はご存じのように、天候不良でスケジュールが変更になり、セミファイナルを朝一番でやるはずだったが、予選各ヒート8位まで全員が決勝の2本勝負という極めて異例の展開になりました。
驚くことに、決まったのは当日の朝だった。

また、セミファイナルなしで16名全員での決勝自体は特に問題はないが、本来決勝は各自3本滑ってベストポイントで争うのが、天候と時間の関係で2本のうちのどちらかのベストを取るということで、少なからずとも選手の心の中で、2本だけならどのルーティーンで行くか迷いは生じたのではないかと僕は感じた。

ここで、優勝した戸塚選手に有利に働いた点が二つあった。
ひとつは決勝当日の朝、セミファイナルが先に行われる予定だったので、朝一番にスキー場に上がり入念なストレッチを繰り返し、彼はレースに備えていたこと。

前日の予選で決勝を先に決めていた、片山來夢、平野歩夢は、コーチからタイムスケジュールの変更を受けすぐに宿泊先を出発するが、遠いこともあり、戸塚選手によりも40分ほど遅れ会場に入ることになる。
また、戸塚選手はセミファイナルが行われなかったことにより体力を消耗せず、決勝メンバーと同じタイムスケジュールで臨めたことも今回の大きな勝因となったと思う。

さらに、予選の得点結果のまま決勝の出走順位が決まり、順位が悪かった戸塚選手は、片山來夢、平野歩夢よりも先に出走することとなる。
先に滑る方が有利とは限らないが、思い切りの良い滑りで高得点が出た場合は、後者にプレッシャーを与えることができることもある。
もう一度ここで重要なポイントは、悪天候のため決勝は2本しかやらないという特別ルールになったこと。
全員、2本とも失敗は許されない。
決勝1本目、平野歩夢がご存じのルーティーンで92.25と最高得点を叩き出した。最終走者の片山來夢は、気負ったのかミスを犯して得点がでない。

残すは決勝最後の1本。
ここで、とんでもないことが起こった。
戸塚優斗は、まったくノープレッシャーなのか、こんな悪天候でなおパイプの状態が良くない中、すべて高さのある、安定した素晴らしいルーティーンで滑り降りて来たのだ。
3発目で入れたFS1260は余裕さえあるような完璧な着地だった。思わず観客から歓声があがる。

これを上の二人に聞こえないはずはなかった。ポイントは93.25。本人も信じられないと言ったほどの圧巻のランだった。

戸塚優斗ルーティーン
FS1080→CABダブルコーク1080→FS1260→BS540→FSダブルコーク1080

思いもよらぬ戸塚選手の決勝ランを見て、土壇場で最後のルーティーンに何を持って行くのか、2人に迷いと動揺が生じたのではないかと僕は思った。

続く歩夢は、優勝するにはあそこで1440を持って行くしか逆転する方法がなかったのかもしれない。それほどまでに戸塚選手の93.25は高い壁となった。たかだか1点の差だが、この1点が歩夢にも非常に大きな1点となった。
結果的に、あの歩夢でさえミスを引き起こすことになる。

今年3月のUSオープンの怪我以来、これが彼にとって公式戦としては初めての出場で、僕には勝負感がまだ戻ってきてはいないようにも思えた。

 

表彰台も狙えた!片山來夢のルーティーンとは?

そして、今回ほとんど紹介されていない最終走者の片山來夢の決勝2本目のルーティンがこれだ。

FS1080テールグラブ→BS CABダブルコーク1080ミュート→FS 900ミュート→BS 900ミュート→FS ダブルコーク1260テール/ミュート。
ハーフパイプ競技を知っている人なら、これがどれほどすごいルーティンかおわかりだろう。

4発目まではすべて高さのある完璧なラン。
結果として、最後のFS ダブルコーク1260で着地を決められることができなかったが、もし彼があそこで立っていたら、いったんどんな得点がでたのだろうか。
おそらく最低でも表彰台はすべて日の丸で独占できたに違いない。
ゴールエリアを離れ、村上大輔コーチに肩を抱きかかえられて、涙が出るほど悔しさいっぱいの片山來夢だったが、きっとこの悔しい経験を彼は次へとの生かしてくれるだろう。


(予選1位通過し、実力的には十分に表彰台を狙た片山來夢。一発目のFS1080ミュートグラブ。)

また予選~決勝と、荒れたパイプに合わせることができず苦戦していた平岡 卓も、片山 來夢同様に、悔しいW杯初戦を味わった。
いずれにせよ、この日本チームメンバー4人は全員世界のトップで戦える実力があり、夢のルーティンの完成に向けてこれからもっともっとトレーニングを積むことになると思う。

チームの雰囲気も非常に良く、お互いがすべてライバルで良き理解者のように思える。
今はまだ、誰がどのメダルの色に輝くか想像することはまったくできない、というか最後の最後までわからないと僕は思う。
このメンバーならきっと、平昌でも大活躍してくれることだろう!
きっと素晴らしいドラマが待ってると思う。
どうか、ジャパンチームメンバー全員に期待してほしい!

最後にこれは余談だが、今回のカードローナのパイプは決してベストの状態とは言えなかった。両サイドのリップはうねり、壁はピンピン。
バーチカル(リップ下の垂直部分)が少し長く、スムーズにリップを抜けられないだけではなく、壁に跳ね返えさせられ着地は難しくなった。
ダニー・デービス、ベン・ファーガソンなどのアメリカ勢、それにDNSとなったスコッティ・ジェームス(AUS)もおそらく相性の悪いパイプだったのだろう。

この大会の最も優勝候補だったスコッティ・ジェームスはオーストラリア人だが、トレーニングの拠点はすべてアメリカだ。
また、彼の場合オリンピックのオーストラリアの代表だけなら、他の選手と争う必要もなく、リスクのあるパイプでわざわざ怪我の危険を冒す必要もないだろう。
こんなパイプでも果敢に攻められる命知らずの輩は、たいてい日本人かスイス人に決まっている。

 

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