GSS代表がアルペン界への改善案を提示する/松里 啓

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ウィスラーでスノーボードを始めた松里啓は、元ナチョナルチーム選手、及びコーチという肩書きを持つ。実を言うと、僕の元ルームメイトで当時はハイジがいるような裏屋根にいっしょに住んでいた。そのアキラさんは現在GSSの代表で、世界でスノーボード・キャンプを開催。レース界では、国内トップ選手を量産している。GSS の活動やアルペン改善案について尋ねてみた。

フサキ(以下F):アキラさんGSSのホームページhttp://www.avis.ne.jp/~gss/ の立ち上げおめでとうございます! まずはGSSの活動内容を教えてください
アキラ(以下A):ウィスラー/ハット/カプルン/菅平などを拠点に国内外でスノーボードキャンプを開催しています。今まではレーシングが中心でしたが今年からボーダークロスキャンプとハーフパイプキャンプもはじめました。もちろんレース同様に専門のコーチによる指導がキャンプの売りです。また、SAJとJSBAそれぞれにGSSでチーム登録して大会にも出場しています。GSSは希望者や所属先を探している選手を受け入れているだけなので、自社でチーム登録をしているプロショップさんも安心してGSSを利用してくれています。将来的にはヨーロッパのスポーツクラブのように高いレベルでトップチームからスノーボードを楽しむ一般の人まで利用してくれる、高さと広がりをもったプログラムにしていきたいと思います。

F:まるでヨーロッパのサッカーを想像させるようなカッコいい構想ですね。よく理想と現実のギャップで挫折する人が多いですが、実際GSSの運営の方はどうでしょう?
A:GSSの場合は、規模は小さいけど第3段階まで進んでいます。第1段階は週末や短期キャンプに参加してくれる一般スノーボーダーの人達です。GSSでは一人でも気軽にポール練習をできる環境を提供することで、スノーボード・レーサーの底辺拡大とレベルアップを計っています。数百人を数えるこの層には様々なタイプの人がいて、草野球を楽しむようにスノーボード・レースを楽しむ人や、はじめてポールに入る人、冬休みを利用してきた小学生、地区大会に備えて練習をしに来た人、etc・・・などがいます。第2段階は海外長期キャンプ参加者やシーズンメンバーです。第1段階を経てスノーボードにハマっちゃッた人たちなので、この層には本格的にスノーボードに取り組み始めた人が多くいます。学生やフリーターが多い層で、毎年数十人のスノーボーダーが参加してくれます。特徴として、1ヶ月から1シーズンある期間を生かして、滑り方の基本~応用、そして実戦まで時間をかけて指導できるのでテクニック的にはかなり進歩します。実際に毎年多くの選手がプロ資格を取ったり公認大会で好成績を収めています。去年まではこの第2段階までだったのですが、指導者としての夢に向 かって今年の4月からはじめたのが第3段階です。第2段階から選抜したこの段階の選手とは、長期プランをきっちり組むことために例外なく年間契約を結んでいます。最低1年、選手によっては5年計画で世界に通用する土台を持ったスノーボード選手を育てることを目標にしているので、雪上はもちろん体力作りやメンタル・生活改善などプロアスリートとして必要なことを1から教えています。スポーツでトップを目指す以上、他のスポーツのトップレベルの選手に対して、胸を張って『俺も一流のアスリートだ』といえるようにスノーボーダーもなるべきでしょう!そうでないと世界も見えてこないんじゃないかな!!と経験から確信しているのですが、ナショナルチーム以外でそういう指導をできる(選手から見れば受けられる)環境がないのでそれを自分で作っちゃいました。第3段階は簡単に言えばプロ野球の2軍、世界に羽ばたくためのファームです。今9人の選手が第3段階でがんばっています。今はまだ実現していないけど最終段階は世界を転戦するトップチームをGSSのプログラムを通して育ってきた選手を中心につくることです。トップチームはGSSから世界にはばたいた選手が10人ぐらいになっ たとき実現できるドリームチームです。ちなみに世界に羽ばたくという言葉は=世界で通用する=第1シードかそれに近いレベル、という意味で使っています。こんな感じで一歩一歩夢を実現させるためにがんばっています。

F:凄い。いやあ、考えていますね。GSSの次の予定はどうなってますか?
A:11月にスイスのサースフェーでハーフパイプキャンプ、そしてオーストリアのカプルンでレーシングキャンプを同時開催します。12月からはいよいよ日本国内で活動開始です!詳しくはホームページを見てください。

F:ますます忙しそうですね!ところで、アキラさんとは僕とは元々僕のカナダのルーム・メイトで、その後には日本のナチョナル・チーム選手としてまたコーチとしても活躍しています。カンタンでいいのでdmkのweb読者の方々に自己紹介してください。
A:dmk読者の皆さんこんにちは!!ちょっとたれ目で子供の頃は鼻もたれてた松里です。今度、僕が社長、ただし所得は新卒OL並ですが。GSSのホームページが出来ました。dmkのHPは大いに参考にさせてもらっています。今度リンクもはってもらったので是非GSSのほうも見てくださいね!余談ですが、冬に向けて体力作りはしてますか?引退して2年、技術的には進歩しているのに体力が急降下・・・イメージ通りに滑れないことが多くなってきた僕から皆さんへのアドバイスです!『シーズンオフ、欠かさずやろう腹筋・背筋・ランニング!』

F:いやあ、あいかわらずこういうインタビューでもプロ根性発揮してくれますね(笑)。期待していた以上のものを生み出す。あいからわず松里節さく裂で安心しました。ところで、今、日本のアルペン界というかレース界は以前に比べると縮小して来ているように思えます。アキラさんはそのことについてどう受け止めていますか?何か打開策とか考えていますか?
A:うーん難しい問題だけど、3秒で答えが出たね!オレぐらいになると。つまり原点に返ればいいと思うよ。どういうことかというと、昔クレッグ・ケリーとか世界一なのにフリースタイルブーツでレースに出てたんだよねフサキ君!?フリースタイルはまさにフリースタイル、何でもできる魔法の道具だ!そしてポールはね、実は誰がやってもおもしろいよ!ポールをくぐってタイムがでる、うまくなればタイムがどんどん速くなる、これは刺激と達成感が同時に得られる最高のプレジャーだと思う。ただレース(大会)とかになるとあのワンピースやスキーのヘルメットなどが敷居を高くしてしまう。もちろんこれは意味があることでトップレベルに近づけば必要なマテリアルだけど、最初はいつものカッコ、いつもの道具でぜんぜんオッケーだよ!つまりフリースタイルボードで空気抵抗バリバリのウエアでレースに出ても良い、オレが許す!ていうか出なさい!!昔はワールドクラスの大会でもそういうつわもの達がいて、しかも強かった。今でもニュージーランド選手権のGSなんかフリースタイラーが半分ぐらいいて、しかもコースが難しくなるほど強い強いそりゃー強い!! GSS が誇るレーサーが大敗を喫したのはつい1ヶ月前のことだ。最近BXが盛り上がっていて一時期完全に2分化された競技スノーボードに接点が出てきているし、GSSのキャンプがレースだけだった頃、BXで勝ちたいからポールに入らせてくださいといって参加してくれた選手なんか今では立派にトップBXライダーの一人だもん。とどめにテリエもロス・パワーズもポールに入っても日本のトップクラスのレーサー以上に速いって知ってる??だからフリースタイラーよ、ポールに入ろう!圧雪バーンで連続ターンをコントロールできるレベルならばGSSは歓迎する(ズレズレでも良し)。今までおそるそろるGSSのポールに入ってみたフリースタイラー達は、みんな楽しくなっちゃって昼も休まず滑っていたぞ!本当に。さて、打開策だがフサキ君、こうしてポールを楽しむ人が増えれば、そのうちの何割かはすっかりはまってアルペンボードにも乗るようになる作戦。どうだー!!!

F:なるほど、一見ワンピースたヘルメットの格好に代表されるように一種独特のような世界だけど、フリースタイルでもOKということですね。確かに、僕も昔はそういう乗りで参加していた良き時代を思い出します。ところで、ハーフパイプの世界では、ライオが世界大会で優勝するなど、日本人が活躍しています。ところが、レース界ではそういったいいニュースがまだ聞こえてきません。どのへんに原因があると思っていますか?
A:一言でいうと環境の差かな。ハーフパイプは規格があるから世界中どこでも似たようなものでしょ(もちろん良し悪しがあることは知ってるけど)でもレースは広くて長いコースをあたりまえのようにカッ飛んでる人に勝とうと思ったら、こっちもカッ飛ぶしかないのに日本では無理がある。環境というのは畑みたいなもので、コーチは肥料、選手は作物に例えるとわかりやすいかもしれないけど、良い作物を育てるには良い環境と肥料が不可欠!でも日本国内にはその両方とも欠けている。だから海外に行くわけだけど、今度はそのためのお金がフリースタイラーのほうが断然手に入りやすいからなおさら差がつくと思う。後は世界で二流になると精神的に変わってくると思うよ。ニ流ということはもう少しで一流だから目の前ににんじんがぶら下がっているようなもので俄然やる気になるじゃない!少し前のハーフパイプチームがニ流だった。でもアルペンはまだ三流だから頂点が見えない、だから世界の頂点というにんじんよりも、ついつい足元の国内ランクという草に目が行ってしまう。すると世界で勝つための努力よりも日本のトップクラスでいるための努力をしてしまう。でも最近何人かは 二流になりそうな選手が出てきているからレーサーにも期待したい。ソルトレークよりもトリノで勝負かな!?

F:なるほど。ひじょうにわかりやすいですね。ソルトレークよりを先を見ているとはビックリしたし、またそのようなしっかりとしたビジョンを持っているので本気を感じました。GSSから世界選手が出ることを願っています。ところで、現在、世界の強豪というとどのへんで彼らはどのあたりが凄いんですかね。dmkの掲示板とか読むと、ロスのリカバリー力みたいに魅力を感じる方もいるようですが。
A:最近勝てないけど女子ではカレン・ルビーが凄すぎる。柔道で言えば田村亮子レベルの選手だったね!過去形にしたのは最近勝てないから・・・。何がヤワラちゃんと違うかというと、オリンピックですんなり金メダルを取ったこと。だから逆に弱くなってしまった。大きな目標を達成した後も闘争心など勝つために必要な気持ちを維持することは、たぶん凄く難しいことだと思う。田村選手の10年の長期にわたる偉業は金メダルを取り損ねたからこそできたことだという気がします。カレンも長く活躍しているけどまだ若いし、ソルトレークに向けて今年あたりからまた勝つ気がする。男子ではマチュー・ボゼットとステファン・カルシェッツが強い。強い&凄い選手に共通していることは、精神力が凄いことかな。根性主義とかそういうことじゃなくてエネルギーが感じられるね!だってオフシーズンにきついトレーニングを続けるには気持ちがしっかりしていないと無理だし、うまく滑れないときにあきらめない、めげない心も必要だし、プレッシャーに打ち勝つ心だって大切だ!!技術的には見た目は違っても基本がしっかりしているから乗る位置が的確でボードを的確にコントロールできる。 プレッシャーコントロールもエッジコントロールもうまい!だから速く滑れてなおかつミスも少ない。余談だけどレースで本当に強い選手は例外なくボーダークロスも速いしパウダーもうまい!!

F:うーん、これも刺激的な発言ですね。田村が強い要因は金を取れなかったことになる、という分析力には思わず納得したし、強い選手の説明も素晴らしいですね。今後のアキラさんの目標と、そして夢を教えてください。
A:おかげ様でGSSも何とか軌道に乗ってきたので、これからは一般向けのサービスをもっと充実させて、たくさんのスノーボーダーに参加してもらいたいと思います。コーチになった目的と夢は“世界で勝てる選手を育てること!”なので、実現に向かって前進していきます。応援よろしくお願いします。

F:本日はどうもありがとうございました。
A:こちらこそありがとうございました。このインタビューが受けられて感激です。感想とか質問どんどんください!!

SPONSORS:BLAX、ブリコ、カンピリオ(以上個人スポンサー)

スポンサーに関する松里氏のメッセージ:
個人スポンサー、特にメインであるボードはGSSとしていろいろなショップとお付き合いしやすいように今後も受けないことにしています。だから、ゲレンデで僕がどこかのボードを履いていたら、それは気に入って買ったか、誰かのお下がりか、テスト中か・・・まあそんなところです。想像してみてください。『GSS WINGS』のチームスポンサーを募集しています。誰かお金持ちの人、企業の宣伝部や偉い人につてがある人よろしくお願いします!!(資金があれば世界征服計画の実現が2年は早まります!)

 

使用ボードの長さ:
GS用 175cm SL用154cm スタンス幅:44cm スタンス角度:前54~57度、後51~54度 前足のトゥ・アップ:1cm&インカント=3度 後ろ足のヒール・アップ:1cm&インカント=3度

編集後記:
インタビューでもふれたけど、アキラさんはとてもプロフェッショナル意識を持った人である。選手時代もプロならこれぐらいのこと言わなくちゃいけない!という気持ちを常に持っていた。今回のインタビューでも読者を楽しませてくれる、刺激的なコメントをたくさんくれてありがとう。ウィスラーで出会った頃からずっと夢に向かって走っている松里啓。今度はどんな大きな夢を実現するのか楽しみだ。

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