滑走面の深~くてためになるお話/谷田部 馨信

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今回、このインタビューを見た方は、かなりラッキーかもしれません。
というのも、これまであまり伝えて来なかった、スキーやスノーボードの深~くてためになるお話をご紹介するからです。
お迎えしたのは、サロモンやアトミックの販売を行っているアメアスポーツジャパン株式会社にてスキー・スノーボードのクオリティマネージメントを担当しているKiyo(キヨ)こと、谷田部 馨信さん。

このクオリティマネージメントというのは、製品の品質に関する改良点を本国の担当者へフィードバックしいて、より良い製品の開発につなげていくことが主な役目です。ようはスノーボードに関するマテリアルに深く精通していなければできない仕事。したがって、キヨさんは滑走面に関することもくわしいのです。

そもそもこういう知識を知ることにより、一般のスノーボーダーにどのような恩恵を得ることができるのか。そのへんもくわしく聞いてみたので、ぜひ参考にしてください!

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先日、キヨさんから滑走面にそもそもメーカーがあると聞いて、目からウロコだったのですが、確かにウェア素材のゴアテックスやココナのように、滑走面にもそういうメーカーがあっておかしくはないですよね。まずは、そのへんのメーカーの数や、それぞれの特性をわかる範囲内で教えていただけませんか?

正確なメーカー数はわかりませんが、きちんとした製品を製造しているスノーボードメーカーが採用している滑走面メーカーは数社しかないと思います。
その中でもスイスのIMS PLASTIC社のP-TEX(ピーテックス)が有名です。みなさんも「P-TEX」という名称を聞いたことがあるのではないでしょうか。
滑走面はメーカーによる特性というより、製法により大きく2種類に分けられます。

 

その2種類の製法とは?

ほとんどの滑走面は、ポリエチレンを材質をに使い製造されています。

ポリエチレンを成形する方法は、熱して溶かしたポリエチレンを薄い板状に伸ばす「押し出し製法(エクスクルード)」と原料を鋳型に入れ、熱と圧力をかけて固めた円柱型ブロックとなったものを薄く板状に削る「焼結製法(シンタード)」があります。 P-TEXにもエクスクルードベース(P-TEX1000まで)とシンタードベース(P-TEX2000以上)があります。

簡単に違いを説明するならば、エクスクルードベースは比較的安価で、きちんとワックスを塗っていない状態でも「ある程度」の滑走性があります。もちろんワクシングした方がいいのは言うまでもありません。このような特性から、初心者用、初中級用モデルに採用されていることが多い滑走面です。

シンタードベースは、その製造工程や出来上がった性能の良さから、エクスクルードベースより高価になります。強度があり、適切なメンテナンス・ワクシングをすれば、高い滑走性能が保てるので、上級モデルにはシンタードベースが多く使用されています。

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(なんとこのロール状になっているものが、滑走面!このように販売されメーカーの工場へ出荷されるんだね。勉強になるなあ~。)

 

そうか、メンテナンスなしなら、安い板の方が、高価な板よりも走ることもある のか!
シンタードベースの滑走面は、ワックスして初めて良いパフォーマンスが出せるんですね。

ここから先は化学的な内容となるので、私もあまり詳しい説明までできないのですが・・・。

滑走面のグレードの違いは、ポリエチレンの分子量で変わってきます。ポリエチレン分子は、ヒモもようにつながっていて、それが集まって固まりになっているとのことです。そして分子量とは、分子の長さ(=重さ)であり、分子量が大きいと粘りが強く、押し出し製法(エクスクルード)では上手く板状に出来ないため、焼結製法(シンタード)で製造されているのです。シンタードベースの方が分子量が大きいので、強度が高く、またワックスの吸収がいい滑走面になります。
シンタードベースと呼ばれる中にも、処理や分子量、混ぜる素材により、グレードや性能は様々なものがあるようです。

 

なるほど、自分の板がシンタードの滑走面ながら、俄然ワックスをしたくなりますね。
そもそも自分が使用している板が、シンタードベースなのか、エクスクルードベースなのか。そのへんをチェックする必要も理解できました。

スノーボードの滑走面は、滑走中常に雪面との摩擦やエッジングの圧力がかかっています。これは、雪の上をスムーズに滑っているように思えますが、想像以上の負担があるようです。みなさんが愛用しているスノーボードも特にエッジの脇が白っぽく毛羽立ったり、溶けているように見える状態になってしまったものがあるかと思います。ワックスが適度に塗られていないまま滑り続けると、このような状態になりやすいのです。ワックスは、雪面との摩擦を軽減する大切な役割があるからです。

滑走面は、ポリエチレンが固まる時に分子が密な結晶部分と微細な隙間がある非結晶部分ができます。ワックスは非結晶部分の非常に細かい隙間に染みこみますが、ワックスが抜けてしまったまま摩擦が加わると、その部分が毛羽立ってしまい、滑走性が損なわれるということです。

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(黒い滑走面からワックスが抜けて、その部分が毛羽立ち白くなって来ている状態。ボードがワックスを欲して叫んでいるようだ。)

 

大切なマイボードの滑走面が損なわれるなんて怖い。改めてワックスの重要性を感じます。

愛機の滑走面が傷んでしまっても、丁寧なメンテナンスによってリカバリーできます。まずは、ストーングライディングマシーンがある信頼できるチューンナップショップで滑走面の表面をきれいに整えてもらいます。そして、定期的にワクシングをしてください。

滑走面の厚みは、だいたい1.5mmから2mm程度しかなく、ワックスが染み込む部分は0.2mmから0.3mm程度とのことです。
スノーボードをいい状態に保つためには、できればワックス用アイロン、スクレイパー(余分なワックスを剥がすもの)、ブラシは揃えておきたい用具となります。

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(そもそも滑走面というのは、1.5mmから2mmのもの。)

 

なるほど、よくワックスしないと板は白く毛羽立ってしまうような感じになりますが、そういう板でもストーングライディングマシーンで表面を整えてもらえばいいんだ。

シンタードベースの中には、グラファイトを混ぜたグラファイトソールというものもあります。黒い滑走面(黒が全てグラファイトソールとは限りません)で、アルペンボードによく使われています。グラファイトを混ぜることにより静電気の発生が軽減できるので滑走面に汚れが付きにくくなり、より滑走性が良くなるとのことです。滑走性と引き換えにワックスの抜けも早いので、更にメンテナンスに気を配ってください

 

この話も興味深いですね。ここでも幸せの引換に、メンテナンスの取引があったか(笑)。
汚れ難くよく滑るグラファイトソールは、ワックスの抜けも早いのでマメにワックスをしたい!

滑りのレベルが上がる程、滑走スピードが増して摩擦が強くなり、強いエッジングによりエッジ脇に強いプレッシャーがかかるようになります。そこでワクシングにひと手間かけて、エッジ脇に低い雪温用の硬いワックスを塗ることで(それ以外の部分は雪温に合ったワックス)、エッジ脇の滑走面の傷みを軽減できる効果があります。ワクシングもなかなか奥が深い分野ですね。

 

それは良いことを聞きました。まさに隠れた裏技だ。もう、ここまでの話聞いて、普段ワックス無精の僕も、かなりワックスやる気が増しましたよ(笑)。早速、明日、エッジ脇に低い温度のワックスを塗ってみます!

ポリエチレンの滑走面は、130度以上になると溶ける可能性がありますので、ワクシングの際にアイロンの温度には気をつけてください。ワクシング用ペーパーを使用すると直接アイロンが滑走面に触れないため、滑走面の保護になるだけでなく、汚れも吸い取りますのでお勧めです。また、とても高価ですが温度管理が緻密にできるデジタルサーモスタッド制御のアイロンも各ワックスメーカーから発売されています。

 

ますますマニアックな世界に入りそうだけど、楽しそう~(笑)、ともかくワクシング用ペーパーは使うようにします。

メンテナンスを心がけていれば、いいコンディションを長く保つことはできますが、残念ながら現在の滑走面の特性上、傷みを無くすことはできません。
滑走面をチェックしながら、たまにチューンナップショップでストーングライディングすることも必要になります。
スノーボードは、用具が滑りに及ぼす影響が大きいスポーツです。良く滑る板は、ターンも非常にスムーズになります。いい状態のスノーボードでより気持ちいいライディングができることを願っています。
Happy Snowboarding!!

 

 

 

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