日本スノーボード・ビデオの鍵を握る 小川忠博

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昨年、小川忠博氏がチャンピオンビジョンズを出てビジュアライズイメージを立ち上げたと聞いた時、驚かされた。これまで主要ビデオ・タイトルと言えばチャンピオンビジョンズが取り扱うという流れだったが、今では主力タイトルの多くはビジュアライズイメージを取り扱っている。
一部、スノーボード業界では、この革命的な動きを『小川の乱!』と称したほどのインパクトだった!

小川氏は、日本のスノーボード・ビデオ創世記からずっと代理店業務に携わり、また映像に関してもプロフェッショナルな知識を持ち、その肩書きは「社長」でなく「クリエイティブディレクター」になっている。
そこに氏の映像に対する強い思いも見えてくるようだ。

一方、スノーボード市場では、フィルム・プロダクションズのトップ・ランナーであったマックダグが撤退(休止?)宣言などもあり、まさに業界は大きな波に巻き込まれている。
今、スノーボードのビデオは、購入するのではなく無料でダウンロードするという動きが活発になって来ているのだ。
その背景には、ビデオ映像はメーカーのプロモーション・ツールとして使われているということがある。
メーカーは、ビデオを売るのではなく、より自社ブランドをPRしたので、無料で映像を公開することは逆に良いことである、と考えているのだ。

そんなスノーボード映像業界の風雲急を告げる時代、この世界を日本では誰よりも見ていた小川氏は、どう考えているのか?
氏への興味は尽きない。

今回のグローバル・インタビューでは、そんな状況においての小川氏の考えの他、氏のスノーボード・ビデオに対する思いや、未来予想など含めてお伺いしていこう。

Interview by Fusaki  


昨年、小川さんがチャンピオンビジョンズを出てビジュアライズイメージを立ち上げたと聞いた時、ビックリしました。チャンピオンから出て、自身でカンパニーを立ち上げた経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか?
  

チャンピオンビジョンズを辞めてしまった後、元々、チャンピオンビジョンズのUS本社にいた人間で、現在、VAS Entertainmentに、これまた節操なく勤めている人間がいるのですが。彼と話をする機会があって、その中で、彼のいるVAS Entertainmentが日本に代理店を独自に展開したいという話を聞きました。
そこでそこの代表取締役としてお前を推薦したいんだけど大丈夫か、という話をもらいまして、その話に見事に「Fish On!」ですね。釣られてしまいました(笑)。

それからトントン拍子で2月中にはVAS Entertainmentと契約を済ませて、3月11日には会社の登記も済ませて。
もの凄いスピードでビジュアライズイメージが誕生したという流れです。

現在の小川さんから送られて来る頻繁なメディアリリースを拝見すると、とても積極的な姿勢が伺えます。ビジュアライズイメージを設立したことで、チャンピオン時代との意識的な違いは?

やはり大きな意識の違いがあります。ビジュアライズイメージはまだ新しい会社ですから、みなさんに会社を知っていただく意味も含め、会社としてのアピールをどんどんさせてもらいたいと思っています。
スタッフにも、あまり過敏に市場ニーズとの整合性や業界内外の常識にとらわれないで、まずは「自分たちが何をしたいのか?」ということを考えて、それを実現していこうと話をしています。
ビジュアライズイメージのスタッフは、私とは違って、ひじょうに優秀で、それぞれの経験値も高く、センスの良い人ばかりですから、ベースだけしっかりしていれば、おもしろいアイデアを、良い方向性で出してもらえる力があります。
そういうスタッフのアイデアをアピールすることが、会社のカラーとなって、それをみなさんに感じてもらえるようになればと思っています。
私を含めた弊社スタッフ全員に、「クリエイティブ」のタイトルを付けているのも全員に何かを生み出す責任があるという考えからです。

ここ数年、スノーボード・ビデオの無料ダウンロードという動きが活発化しています。映像作品をDVDにして販売するというビジネスを長年行って来た小川さんにとっては、とても重要な問題だと思いますが、このような動きに対してどのように考えていますか?

悪いことではないと思っています。
弊社もYou Tube、Yahoo動画、iTuneのポッドキャストで、それぞれ無料視聴のオリジナルチャンネルの展開もしていますし。
4月には、DVDでリリースする前のスケートボードの作品を配信してしまう予定です。 
 
誤解を恐れずに言えば、もともと、ビデオやDVDというパッケージがメインというメディア・スタイルに限界があると思っています。
映像の世界だと、映画、テレビ、DVDパッケージ、ネット配信など、様々な形で映像を一般の人が楽しめるのに、スノーボードも含めたエクストリームスポーツは、ビデオやDVDが90%以上の世界だったように感じます。

ビジュアライズイメージの使命は「人を楽しませる」という、エンターテイメント・ビジネスですから、基本的に人が喜びを見出せるようなシチュエーションをどうやってビジネスにできるかを考えなければいけないと思っています。

もちろん、そこにはビジュアライズイメージとしてのビジネスにおける主張もなければならないと思いますが、世の中の流れや、人の楽しみの流れにあったビジネス展開を、ビジュアライズイメージ側がしっかりと考えないといけないと思っています。

小川さんは、このアクションスポーツの映像世界の中で、日本ではトップ・ランナーだと思うのですが、現在の作品の流れをどのように考えていますか?

私はあんまり深い考えはありません。
先ほどの質問の答えとかぶる部分もありますが、何か流れがあるのであれば、流れはせき止めてもしょうがないので、流れにうまく乗らないと(笑)。

そこの流れに意見することは、仕事としてはあまり意味のないことだとも思ったりもしてますし、その流れを理屈抜きに感じれる感性と、ビジュアライズイメージのやりたいエンターテイメントをうまくマッチさせて、良い意味で、みなさんに喜んでいただければ良いと思います。

漫画「ワンピース」で主人公のルフィーが「誰も支配なんかしない。この海で一番、自由な奴が海賊王だ。」と言ってましたが、私の考えはそんな感じで、ビジュアライズイメージもエンターテイメントを扱わせてもらう上で、そうありたいと思っています。ビジュアライズイメージが狙うは、エンターテイメント王ですから(笑)。

なるほど(笑)。ところで昨年は、トラビス・ライスのザッツ・イット・ザッツ・オールが世界各国で評価が高かったですが、小川さんから見て、最高作品賞のスノーボード・ムービーは?
また国内の作品でお気に入りのもの、その他、ウエブ読者の方にオススメのビデオをご紹介してもらってもいいですか?
それと来季の作品で小川さんのオススメを。

赤丸急上昇中のTHINK THANKプロデュサー、ジェシー・バートナーと。

この質問、ホントーにみなさんに良く聞かれます。(笑)
ちょっと優等生的な回答で嫌なのですが、いつも答えはいっしょで「それはみなさんが決めてください」と。
スノーボード作品の楽しみ方っていうのは、音楽のアルバムCDを聞くのと少し似ているところがあると思うんです。
音楽って、最初に聴いた時に、全くピンと来なかった曲が、ある日、自分のいるシチェーションや、状況が変わると、その人だけの忘れられない名曲になったりすることってあると思うんです。
スノーボード作品も、最初に観た時にはあんまりピンと来なくても、何回も観ていたり、観ている人のシチュエーションや状況が変わると、今まで観ていたものと、違う印象を受けると思います。
逆に最初は良かったけど、2回目に観たらそれほどでもないとかっていうパターンもあると思います。

あくまで私の個人的なことでお話をしますと、昨年、マックダウの「Double Decade」の試写会をやらせていただいたのですが、その際に「Melt Down」を同時上映させてもらいました。
「Melt Down」は、当時としては、ライディング、ライダー、音楽、構成など、どれをとっても、もちろん素晴らしいもので、私も大好きな作品なのですが、新しく始めた会社の試写会で、どうしても「Melt Down」を、大スクリーンでもう1度観てみたかったんです。
DVDにはなっていない作品で、今、ビデオも発売されていないと思います。
紆余曲折はありつつも、マックダウ側にも快諾をしてもらって、上映したんですが、当時、観ていたものとは全く違う「Melt Down」を感じることができました。私にとっては、映像の荒れを超えた、いろいろな想いが、試写会の「Melt Down」に入ってしまってました。たぶん、あの場所で一番、「Melt Down」を楽しく観ていたのは私だという自信があります。(笑)

このMelt Downはかなり極端な例かもしれませんですが、DVDを買っていただくみなさんにも、滑る前、滑った後、大勢の仲間と、彼氏や彼女といっしょに、できなかったトリックがメイクできた日に、子供を寝かしつけた後に、仕事で辛いことがあった夜に・・・。
そんな色々な場面で、その観た人それぞれが、作品それぞれに、想いをめぐらすわけですから、「どれがベスト」というのは、やっぱり決められないですよ。
むしろ、せっかく買った作品を、楽しめる様な、シチュエーションとか場面をみなさんが逃さないでいただければ嬉しいですね。
ご質問の回答としては、ちょっとズルくて申し訳ないのですが・・・。

「あの場所で一番楽しく観ていたのは私だという自信があります。」という小川さんの言葉に、ビデオ作品は誰それの批評などに惑わされず、自分が大好きなものを素直に観ていきたい、と改めて思いました。
ところで、かつてあまりビデオが普及していない90年代前半までには、大会に出で名を馳せることがプロの道でありましたが、今はビデオでベスト・パートを取ることがプロの王道という流れがあります。やはり、これからも映像がこの業界に与える役割は大きいと思いますか?

役割が大きいということを信じてこの仕事をしていますし、そうであり続けたいと思っています。
それぞれの形は違いますが、個々のプロダクションは、自分たちの表現できる格好良さを、出演しているライダーたちといっしょに、命懸けで映像に残そうとしています。

そんな彼らの想いを、みなさんに届けさせてもらえることに、大きな責任感も感じていますし、喜びも感じています。
枚数が売れているものというのは、やはり作品としては良いものだと思います。
しかしマーケットニーズに合わせているだけでもシーンは作っていけません。
彼らといっしょに、映像というものを通して、スノーボードのエンターテイメント性を追求して、みなさんが理屈抜きに喜んで、興奮していただけるようなものを届けていくことで、スノーボードの可能性を拡げていけるというのは、映像が持つ1つの大きな役割だと思っています。

そもそも小川さんが、この世界に入って来たきっかけは?

普通にコンビニで求人雑誌を買って、そこで探したチャンピオンビジョンズの面接に行きました。
スノーボードとかに関係ある仕事を探していたわけではなく、チャンピオンビジョンズに入る前に、少しだけアメリカに行っていたこともあったり、英語の授業が好きだったりもしたので、海外とつながりのある仕事がしたいと思い面接しました。

もっとぶっちゃけますと、チャンピオンビジョンズのある五反田で、唯一の親友がお寿司屋さんをやってまして、五反田行くと、奴と遊ぶのに、ちょうどいいかなと。
今も相当いい加減ですが、当時の私は本当にダメダメ人間でしたので・・・。

あとから聞いたのですが、その時の面接は5人くらいの応募があって、遅刻していったのは、私だけだったそうです。事務所の場所がわからなくて、10分くらい遅刻をしてしまいました。
また、その面接の時に、当時ではまだ珍しいマッキントッシュを事務所で使っていて、面接後にそれでゲームを30分くらいやったのですが、それをやったのも私だけだったそうです。私の方は「やっていけば」と言われたので、言われるがまま「じゃあ」と、やっていただけだったんですが。
そんなだったので、実は他の人が面接で決まったんですが、たまたまその人が、別で面接を受けた会社に決めてしまってたそうで。
それで2番目に話が回ってきたのが私でした。それがチャンピオンビジョンズに入ったきっかけで会社は変わりつつも、お陰様で今でもその仕事を続けさせていただいているしだいです。
本当にこれは幸せなことこの上なく、現在も含め、これまでも支えていただいたみなさまへの感謝は言い尽くせない限りです。

小川さんは、一度断ったというか、ミソをついたでも言うのでしょうか。そういうフィルム・プロダクションズさんとは2度と付き合わないというような話を聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
その話を聞いて、現代やたら商売主義なビジネスライクな付き合いが横行する中で、義理や筋を大切にする侍のような方だ、と思ったのですが。

その話は本当です。
DVDを扱わせてもらうのって、それを制作している人の人生の一部を預からせてもらっているんだ、と思っているんです。
もちろんDVDを売ってなんぼでもありますし、「多くの人に観てもらいたい」というゴールは、プロダクションと同じモチベーションを持ってやらせてもらっていると思っています。
でもDVDが売れた、売れないだけで、プロダクションとつながっているのは、私としては、凄く、寂しいんですよね。別に売れなくしたいと思って扱っているわけでもないし、できる限りの努力もさせてもらっているのに、「あそこの会社の方が売れる」みたいなことで、コロコロと代理店を変えるプロダクションは、正直、信用できないんです。
だから他の会社でやっていて、「チャンピオンの方が売れるから」みたいな感じで話をいただいた時も、取扱いをお断りさせてもらっていました。
多くの人に観てもらうって、プロダクションと私たちのような配給会社が、お互いを尊重しながら、アイデアを出し合っていかないと絶対に成功しないんです。
この関係が無くて売れるDVDっていうのは、最初は良くても、必ずダメになります。

今、扱わせてもらっているスノーボード以外も含めた日本のプロダクションさんの中で、 ビジュアライズイメージをやると決めた際に「もし小川さんが、また同じ様なことをするのであれば、小川さんの会社で扱ってほしい。」と言ってくれたところも、いくつかありました。
信じられます?まだ会社もきちんと立ち上がっていないし、お店との口座も1つもないし、本当にまともにやっていけるかどうかなんて全くわからないし、お金だってちゃんと払えるかも分からないし。
「そんなんだけど良いのかな?」って伝えた時に、「そんなの全然関係ないよ。小川さんとはお互い様だから、小川さんが俺を必要だと思ってくれるのであれば、それで良いよ。」
と言ってくれたプロダクションもあったんですよ。泣けましたねぇ~。それを言われた夜は号泣でした(笑)。
私なんかより、彼らの方が、全然、侍ですよ(笑)。足向けて寝れません、本当に。
そんなことを言ってくれる人が、一人だけではなく、何人もいるのに、一度、離れてまたお願いしてくるようなプロダクションとは仕事できないですよ。やっぱり。ずっといっしょにやってくれている彼らにも悪いと思ってしまって。


今回は小川さんの一言一言に感銘を受けるインタビューとなりました。小川さんのビジネスに対する真摯な考え、また周りに対して常に感謝の念を忘れないことは、現代の横乗りビジネスで忘れがちになりそうな大事なことだと思います。
貴重なお時間ありがとうございました!
 
 

ビジュアライズイメージ
平成20年3月に設立!スノーボードをはじめとするアクション・スポーツDVDなどの販売、その他、映像作品企画立案、制作サポート、映像作品権利販売、映像ライブラリー事業などを行っている。くわしくは、以下のサイトからAbout Usをご参考に!
http://www.visualizeimage.com
 

 

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