マツモトワックス教祖/松本年一

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ワクシングを正しく行ったボードはよく滑る。どのメーカーのものでも滑る、と思う。だから極端な話、ワックス・メーカーは世の中に1社だけあれば事足りるのかもしれない。だけど、世の中にはたくさんのワックス・メーカーがある。特に日本はワックスのメーカーが多く、そのシェア争いはまるで戦国絵巻。未だに天下統一は成し遂げておらず、ワックスメーカーが乱立している状態だ。
思えば、今回の主人公であるマツモトワックスが出る前には、Toko、Briko、Swixの大手スキー・メーカー・ブランドの実力がスノーボード業界にも強く影響されていた時代であった、と思う。例えば、スノーボードを販売しているショップに、TokoやBrikoのワックスがあるのはあたり前だった。もちろん、今でもそのようなショップはあるが現状ではスノーボーダーに認められたワックスがスノーボード・ショップのシェアを奪うというマーケットになって来ている。マツモトワックスの同じ時代に立ち上がったR≒0やそのずっと前からあったガリウムなどはスノーボーダーに人気のあるメーカーだ。
このような乱立時代になって、さらなるシェア拡大に必要なことは、そのワックスの特長を人々に伝え、そのワックスが与える滑走効能が上がる快感を与えることではないだろうか。これは宗教家がその宗教から得られる「満ちた心を持つ方法」などを伝える布教する活動と似ているかもしれない。
今回は、そんなマツモトワックスの創始者=教祖さま(?)とも言える、松本さんにインタビューご登場していただくことになった。

Interview by Fusaki IIDA

Special Thanks: MatumotoWax Ranger
このインタビューの質問はマツモトワックスを深く愛し、布教活動のお手伝いをするマツモトワックスレンジャーさんからのご意見を参考にさせていただきました。ご協力ありがとうございました。

今年2月の展示会で独立という形を取ったマツモトワックスですが、どうですか? 例えば、実際に自分がすべてコントロールできる立場になり、今、考えてることなど伺いたいのですが。

去年の12月にマツモトワックスカンパニーを創業したのですが、今まで感じなかった大きな責任を感じているね。
何せ、これまでのマツモトワックス7年間の結果として、300店舗近くのお取引先様、延べ数万人に及ぶ商品を購入していただいたお客様に対する、全ての期待と責任を背負うわけで。
お陰で、この春2ヶ月間ほど、根っから楽天気質のオレが、生まれて初めて重度の不眠症に陥りました(笑)。

でも、その一方で今まで感じることができなかったほどの大きな遣り甲斐と、生き甲斐を感じているのも事実です。
今はマツモトワックスに専念出来る環境ですから、時間も有るし今まで自分がやりたかった事を、思いのまま実行に移すことが出来るわけで。
会社は変わったけれども、伊藤&青山両氏とのパートナー関係や販売チャネルは基本変わらず、各地の販売代理店と連携しながら、メーカーとして今迄以上に中味の濃いモノを発信していこうと思っています。

えっ、不眠症になるほど。どのように克服していったのですか?

最後は、開き直りかな!(笑) だって毎晩酒飲んでも眠れないし、かと言って薬は嫌いだから飲みたくないしで。いつの間にか事務所の窓が明るく、外からスズメの鳴き声が聞こえてくる毎日で(笑)
新たな環境と背負った責任が、気付けば大きな不安とストレスにもなっていたようで・・・。
でも、結局あれこれ悩んでいても自分の信じたことを、実行に移すことでしか何も先に進まないことに改めて気が付いて。
今できること、今やるべきこと、今やらなきゃいけないことを、精一杯やっていくことしか今の俺には出来ることないしな・・・って考えたら、悩むこと自体が馬鹿らしくなってきてね。
基本に立ち返ることで、自然と気持ちが楽になってきました。それと、仲間の存在も大きかったですね。あっ、俺には仲間がいるじゃんって。一人で悩むことないんだなって。
それと、最後は神頼み! 近所に目黒不動尊があるんですけど、良くお賽銭持ってジョギングに行ってます。“今日も、ありがとうございます。”って(笑)

そんな経験をしていると、今まで以上に、人の温かさ、優しさと言うものを身に染みて深く感じるようになってきました。
だからこそ常に感謝の気持ち忘れず、その気持ちを素直に表現しながら、生きていこうと考えるようになりましたね。
ある時、人生のワビサビを経験されてきた、62歳の知人が教えてくれました。
何ごとに対しても、感謝の気持ちを忘れずに素直に“ありがとう”と言えるような人間になれると、良いよねって。
今、改めてその言葉の意味を実感しています。

2006年1月、ニセコでのフリーライディングキャンプにて。自ら滑りを楽しむのも、仕事のうちです(笑)

うーん、まさに身をもって言葉の真の意味を感じたようですね。

世の中は、決して自分一人じゃ生きて行けないんだって。当たり前の事ですけど、改めて実感しています。
今回、会社を創る時にも家族、仕事関係の取引先、仕入先、ライダー、友人達など多くの方々から、応援やアドバイスを受けて創業に至ることが出来ました。
みんな僕自身に対して、今は期待をしてくれていると思っています。そして、今はチャンスを与えてくれていると思っています。
だからこそ、自分に課せられた義務としては、与えられたチャンスを活かすこと。その為には、常にベストを尽くしマツモトワックスを長きに渡り継続していくことが、みんなに対する感謝の応え方だと思っています。

なるほど。葛藤の後に生まれたポジティブな道を発見し、まるで1つの悟りを開かれたような松本さんの気持ちが伝わります。

今の自分があるのは、スノーボード業界のお陰であることに間違いありません。15年間、メシを食わせて貰ってきた業界だし、それ以上に何事も半端だった俺を少しは人間としても成長させてくれたと思うし。
これまでの15年間、この仕事を通じて出会ってきた多くの方々から、いろんなことを教わり、それを肥やしに自分の根っこも少しづつ太く長くなってきたと思っています。
古い話ですが、僕がこの業界に入った頃は、業界の成長著しく、それゆえ夢と活気が満ち溢れていました。
そんな中、同世代の若い営業マン達を中心に、毎年秋が到来すると、週末毎に全国各地で開催される展示即売会での応援販売の為に、全国を巡り巡っていました。
気付けば、まるで同志の絆みたいなものが生まれたりしてね・・・(笑)
しかし業界のバブルが弾けた後、止むなく会社を辞めていった者、辞めざるを得なかった者達もこれまで沢山いたのも事実です。
僕と同時期にこの業界に入り、これまで業界を担ってきた仲間達も、今では数えられる程しか残っていません。

僕自身にもこの当時、自分の立場ではどうにもできない会社の問題が立て続き、業界に入ってからの5年の間に、3回も会社が変わりました。
1つの会社で4年以上過ごせたのは、昨年まで勤めていたSMJが初めてなんですよね。
それでも幸いにして、僕は今でもこの業界で好きな仕事に携わることが出来ていますが。

時折、もし神様がいるとしたら、“お前にはまだこの仕事を通じて、やるべきことがあるんだぞ”と、一時の時間を与えてくれているのではないか。そんな考えを抱く時もあります。
その、やるべきことがあるとしたら、自分がこれまで体験してきた、スノーボーディングの楽しさ、大自然の中で仲間達と遊ぶ喜びや尊さを、今はマツモトワックスを通じて表現していくのが自分の役割なのかと思っています。

お聞きし難いことですが、そもそもどうして独立したのですか?

結局のところ、僕自身がマツモトワックスの仕事に専念したかったからなのです。

僕は学生時代に、スポーツイベント会社で3年間アルバイトをしていました。体育会育ちで体力だけは人一倍あったから、殆ど汗を流しながらの肉体労働でしたけれど(笑)
実はそこで初めてスノーボードと出会い、この業界に入るきっかけとなったのですが。
そこでの色々な仕事を通じて、表舞台で選手達が繰り広げる華やかなイベントを、裏方で支えている喜びみたいなものを強く感じていました。
余談ですが、サザンオールスターズの“旅姿六人衆”の歌詞が大好きなんですよね!
そんなこともあってか、今まで自分が表に立って会社の代表になりたいとか、看板になりたいとかっていう欲が全くなかったんですよね。

だから、ぶっちゃけ言えばマツモトワックスのブランドネームだって、今でこそ誰よりも愛着を持っていますが、最初は一人で大反対してましたから!
本当の話、僕がたまたま伊藤さん(クリプトンチューンナップファクトリー代表兼マツモトワックス レーシングサービスマン)から青山さんを紹介され、それがきっかけで社内会議でワックス事業の企画を提起したことが発端となり、
強引に僕の名前をブランドネームに付けられてしまい。9対1位の圧倒的な賛成多数でね。
さらにはその会議の場で、先輩に言われた一言が、“この商売に失敗して在庫が残ったら、お前全部買い取れよ”ってね(笑)
今思えば、ふざけた話ですけど真実なのです。ただ、勢いは感じましたね、このワックス事業の企画自体には。即、全会一致でやりましょう!でしたから。

それで、スタートさせてみてどうでした?

初年度は準備する時間も少なく、勢いだけでスタートしたものですが、2シーズン目あたりから思いの他反響が出てきました。結果的には、ブランドネームのインパクトも大きく影響したように思います。
それと、ワックスの滑走性能自体にも、予想以上の評価を得ることが出来ました。

やがて、取引先やユーザー数も増えていく中で、当時社内における僕の役割がSMITH GOGGLE & マツモトワックスの総括責任者だったのです。当然ですが、売上自体もSMITHの方が圧倒的に多く、それだけ時間のかけ方もSMITH優先で。
ある時マツモトワックスにとって、このままで良いのかなと考え出したら、答えは“う~ん、やっぱり良くない”と自問自答。
なぜなら、自分自身が容量も悪く器用なタイプじゃないので、このまま行くと、二兎を追うもの一兎も得ずになってしまう恐れもあって。
それにマツモトワックスの場合、いわゆる純粋な自社ブランドで、それこそ自分たちがエンジンとなって動かさないと、全てが機能停止してしまうわけなのです。
こうした思いを抱きながら、いづれ時期が来たらマツモトワックスを専業できる環境に移して、一本立ちさせる必要があるなと思いまして。
そのタイミングが、たまたま今回だったと言うことです。

なるほど。だけど、これまでの話を伺って、松本さんのブランドに対する思い、そして何よりこのブランドに出会った機縁のようなものを感じます。
ところで、ワックス業界というのは、どういう世界ですか? 日本はかなりブランドもあり、ワックス文化というのができているようにも思いますが。

確かに日本は世界的に見ても、ワックスブランドの多い国だと思います。この点は、ワックスに限った話ではありませんが。
需要が多い結果として、ブランドも増えていったと言う背景があると思いますが、ワックスに関しては国民性にも所以があると思います。
日本人って、車のワックスがけも大好きじゃないですか!あまり関係ないか・・・(笑)

実際マツモトワックスを始めてから強く感じることは、とにかく市場に対し発信していく作業の多い世界です。
勿論、言うまでも無く商品作りも重要な作業ですが、それ以上に情報を発信していく作業がとても重要に感じますね。
過去に、板、ブーツ、ゴーグルの商売をやってきただけに、よけいに実感します。
ですから様々な手段を講じて、伝えていきたい、伝えなければいけない情報を、発信していく作業に多くの時間を注ぎますね。

具体的には、どんな手段で市場に発信して行くのですか?

その手段とは目的に応じて、広告、webサイト、店頭POP等の活字による情報発信や、店頭、ゲレンデなど人の集まる場所での実演講習、サンプリングを含めたPR活動・・・。
前者は浅く広く。後者は狭くとも深い浸透を目的としています。その中でも、特にスタート時期から一貫して注力しているのが、現場でのPR活動です。
やはり、お客様と直に向かい合ってのライブ活動は、何も優ると思っていますから。それとレスポンスを直ぐに感じることができるから、遣り甲斐もあります。
店頭で、ワクシングサービスをしてあげたお客さんから、“うわ~!こんなにピカピカによみがえった!”とか、ゲレンデのサンプリングで“すっごい滑りました!!”なんて笑顔で言われたら、ほんと嬉しいし僕自身も幸せ感じますからね(笑)
ただ現状では、こうしたPR活動自体が、限られた時間の中で人的パワーにも限りがあるもので、なかなか全国的に実施することができないジレンマもあるのですが。その点をどう対応していくかも、今後の課題の1つです。

こうしたPR活動における、僕らの一番の目的は“一人でも多くのユーザーにワックスをかけることで、気持ち良く滑って楽しい一日を過ごして貰いたい”そんな思いからなのです。

ここ数年、業界内でスノーボード、スキー愛好者の、1シーズンにおける滑走日数の減少傾向が話題にも上ります。当然、この問題は業界全体にとって痛手となります。
その理由として、景気の問題や、趣味、遊びの多様化、携帯電話やパソコンの普及に伴う毎月の小遣いの減少などいくつか挙げられます。
ただ僕等の力では、どうしようもない問題で頭を悩ませるより、一ワックスメーカーとしてはワックスを普及していくことで、“雪山で過ごす一日を、気持ち良く滑って楽しんでもらうこと”に繋がるはずだと考えるのです。
「楽しかったな」と振り返った時に、今日はワックスもちゃんと塗って来たから板が良く滑ったね。なんて思ってくれたら良いのです。そんな楽しい滑走日があり、「来月にもまた行こう!」なんて思ってくれたら嬉しいですからね。

だからこそ、ワックスに興味はあっても、かけ方がわからない人。雪山で、ぜんぜん板が滑らない人。そんな方たちのためにも、キッカケを作ることも僕らの重要な役割だと思っています。

左、ゲレンデにテントを張っての無料ワックスサンプリング。右、毎年恒例のクリスマス時期の御茶ノ水での店頭ワクシングサービス。みなさんも黄色いテントを見かけたら、板を持ってぜひお気軽に声をかけて下さいね!

マツモトワックスはネーミングとか、デザインとかとてもユニークです。あのセンスで勝負しようとした理由は?ステッカーにもある、変な顔のマークは松本さんがモデルという噂がありますが。

結果的に、スタート段階におけるブランドネームが決定した時点で、一つの方向性が決ったような感じです。ブランド名を決めた後に、デザイン会社に頼んでプレゼンされた物が、他でもなくあのロゴデザインでしたから。
そりゃ誰が見ても、そこから湧くイメージは“格好良い”とか“COOL”なんて間違っても思いませんよね。それに、最近ではだいぶ減りましたが、“これって、マツ○ヨのワックスですか?”って、本当に良く言われました(笑)。
実はスタート時点において、ブランドの方針として唯一掲げていたのは、“高性能なワックスを、リーズナブルな価格設定とし、シンプルで選びやすい商品構成とする”これだけです。
元々、僕をはじめ社内のスタッフに、誰一人ワックスに精通している人間もおらず、伊藤さんと青山さんに実技、学科面の“いろは”を教わりながら営業を始めていったしだいですから。
そんなわけで最初の2年ほどは、ブランド政策、方向性をかなり模索していましたね。

それでお客さんの反応が良かった、ということですね。

商品を使っていただいたお客様からは、予想以上の性能評価を得ることができ、またそれ以上のスピードでブランド名が浸透していきました。
特に2シーズン目、まだまだ売上自体とても少なかったのですが、その中でもステッカーの売上比率は相当なものがありましたね。
取引店様に聞くと、“何故かワックスを買わないお客様でも、マツモトワックスのステッカーだけを購入していくケースがやたら多いんですよ”と。
実際その冬、スキー場に行くと、マツモトワックスのステッカーを貼っている板が想像以上に目に付いたり。
また、取引先へ営業に行くと、店員さんなどから“他ではマネできない このノリが良いんだよね!”って言う声もよく耳にして。
そこで、当面はこのノリを基調にして、しばらくやってみようじゃないかと社内での意見が一致し、その結果として商品名にも個性・特徴を打ち出すことにしました。
一応、商品名を決める時のコンセプトは、商品の用途、目的などを、日本語で表現したらどうなるかと言うのがテーマだったんです。
そんな具合で、極上下地仕込(最高のベースを作ることが出来るベースワックスセット)、はじめの一本(固形ワックス初心者が、初めて買うならコレ!)、極楽(とにかく楽に塗れて、気持ち良く滑れる)・・・。
僕等にとって実は、商品名を決める会議の場は、結構楽しい時間なんですよね!

あー、その気持ちわかります。そんな楽しさが、ユーザーにも伝わるのだと思います。でっ、例の似顔絵はどのよにして?

初期の頃、一時“変な顔”をロゴに加えましたが、あれはSMJ(松本氏がマツモトワックスを立ち上げた会社、今年の独立前まで働いていた会社名)の社長がなにげなく書いた僕の似顔絵だそうです。これも勝手に決められたような具合ですがね(笑)

でもこうした中で、おちゃらけたノリだけのブランドと言う、ネガティブな声が出てきたのも事実です。
そこで次の段階としてやるべき事は、ノリはふざけているように見えても、実際には真面目に商売取り組んでいる姿勢を打ち出す必要性を強く感じまして。
実はネーミングだって、地味な存在だったワックスにも“何これ!?”ってユーザーの目が向くように、意図的に付けた背景もあるわけで。
そうしたネガティブなイメージを払拭する上でも、とにかく現場に出る機会を増やし“親切丁寧に、わかり易く何でも教えます!”と、PR活動を強化していき我々のスピリットを発信していくことに注力しました。
その結果として、今のプロモーション活動の基盤ができあがったような具合です。

これがあれば手軽にマツモトワックス信者になれる。あなたのボードの滑走性能アップ! フサキも愛用のベースワックス。結構、これだけでも滑るんですよ!

そもそも根本的にワックスを売ろう、と思った理由は?

実は、ワックスを売りたいと言う気持ちで始めたわけではないんです。
だって、当時僕をはじめ社内には誰一人ワックスに精通する人間なんていなかったですし。まして同じウィンタースポーツ業界でも、ワックスだけは、なんだか難しい別次元の世界だと思っていましたから。
たまたま伊藤さんが、熱心にアプローチしてきたから、話だけでも聞いてみようと思い。そこで紹介されたのが、この業界にはまずいないタイプの青山さん!
口角泡を飛ばしながら熱くワックスの話を聞かされているうちに、単純に、この人たちとならおもしろい仕事ができるかな・・・と思ったことがそもそものキッカケです。

自分はそんな松本さんの人を見る目が好きなんです。だから、松本さんを慕う人、ひじょうにバラエティにとんでいると思うんですよね。当時、たぶん魅力的に見えなかった自分にSmithをサポートしてくれたこと。一生忘れないですよ。今でもろくなこと報告しないで、ほしいものいただいているし(笑)。

いやあ、そんなことないって(笑)
フサキの活動内容からは、人間愛とフロンティアスピリットに満ち溢れたパワーをいつも感じていましたからね!尊敬しているし、とっても魅力的です(笑)

ありがとうございます。
ところで、最近、武術を始めたようですが、ビジネスにも役立つことありますか?

今習っているのは、打撃・関節・絞め技などを取り入れた、総合系の武術です。
小学生の頃、たまたまテレビで観たブルース・リーの映画がきっかけとなり、強い男に憧れ、中学生の頃は極真空手の創始者である大山倍達氏を生まれて初めての尊敬対象とし、執筆本を読破していたものです。
そんな幼少時代からのルーツもあり、この10年程の格闘技ブームはひじょうに嬉しい限りです。生前のアンディ・フグが活躍していた当時のK-1や、PRIDEにはとてもハマってしまいました。
特にPRIDEなんて、小学生の時テレビにガブリツキで観たアントニオ猪木vsアリや、ウィリー・ウィリアムスたちとの異種格闘技戦、また活字の世界で読んだ大山倍達氏の体験を、リアルタイムに競技として体現してくれている真に夢の世界ですからね!
そりゃ、観ているだけで熱く興奮しますよ!ちなみに先日、無差別級王者となったミルコvs皇帝ヒョードルの再戦を、早く実現してほしいと願っています!

このまま格闘好きの私たちが話すと、格闘技通信誌や紙プロレス誌の原稿になってしまうので、お戻し願いたいのですが・・・。

まあそんな中、自分でもやりたくなってきたんですよね・・・(笑)
と思っていた矢先、たまたま僕の友人の旦那様が、自分の理想を求めて独自の武術流派を創設されているとの話を聞きまして。2年前に稽古を見学に行き、その師範の人間的魅力にもひと目惚れして入門しました。
師範は、ビジネスとして流派を創設したのではなく、武術の真理を、求めたい者に対してのみ教えていく。更には武術の真髄を身に付けることによって、人間力も高めて貰いたいと言う哲学を持っておられる方で、少人数で指導の行き渡る稽古を実践しています。
38歳の僕でも無理なく長く続けられるような稽古プログラムもあり、肉体と精神をバランス良く強化していくことを重視して、自己をコントロール出来る重要性をわかり易く説いてくれます。
ちょうどスターウォーズに喩えると、ヨーダがフォースのパワーに目覚めた戦士に、ジェダイの騎士となる教えを説くみたいなね。
(この後、もうちょっと格闘談話になっておりますが、もう少々のご辛抱を)

例えば、ローキックがツボに入るとマジで痛いんですね。しかも暫く辛い痛みが残るし。さらには関節技を極められると、ほんと耐えられない激ヤバの痛みが走ります。PRIDEのリングで、逆十字極められて一瞬でタップしてしまう選手の事を理解出来ました(笑)
ですからスパーリング中など、たとえ手加減されていたとしても、常に恐怖感も伴うわけで。そんな中でも、自ら踏込む勇気と折れない心を身に着けたいと、きっと今の自分が求めているのかなって思います。
これから先、人間として男としての生き方を探る上でも、とても良いキッカケを与えてくれる世界です。
余談ですが、そんな師範が昨年僕が会社を創った直後に、次の言葉を教えてくれました。
“大海にコップ一杯の水を流し続ける。必ず清い水を求めて、下流から上流に魚がのぼってくる”
この言葉の真意が、今まさに自分がこの仕事において実践していきたい理想なんです。目から鱗が落ちました。

師曰く、回りや立ち塞がるものが大きくても、初心であるコップ一杯の水を流し続けることが即ち企業理念であったり武術の要諦であると思います。
物事を広めることに拘るよりも、深めることに拘ろうと思います。深めた結果として、三角錐の底辺は自然に大きな円になっていく・・・。

なるほど、これでやっとのことで通常のインタビューの話に戻せそうです(笑)。「清い水」という部分で、松本さんがそのような仕事を行う努力を続けている。それは広めるという作業ではなく、深める作業であると。その結果、マツモトワックスの良さを理解した、ショップの方、そしてユーザーの方に浸透していく、ということですね。

決してどちらが良い悪いの話ではなく、今、マツモトワックスが置かれた状況、そして自分たちが持っている力を考えると、より深い浸透を図っていくべきだと考えている次第です。
そりゃ、広く深い商売が出来たら凄いと思うけれど、今の自分たちにとっては到底そんな力はありません。未だ根っこが太く長く育ってもいないのに、見た目だけ立派な樹木にしようとしても風が吹いたら倒れちゃうからね。
深みを追求していくこと、それを継続していった結果として、少しづつでも着実に拡がっていけば良いかなって思います。まさに、コップ一杯の水を流し続けていくように。
これから先10年後20年後と、時の経過とともに確実に大地に根を張り、中味の詰まった樹木に育てることが僕自身の責任ですから。
せっかく何かの縁で、このブランドには自分の名前も付いてますからね。だからこそ長く続けていきたいんですよ!
このブランド、オレの子供みたいなものですから(笑)

なるほど。くれぐれもその子供が不良にならないように、これからも成長していくように見守ってください。そして将来は大輪の花を!最後に松本さんの夢を教えてください。

夢は・・・爺になってもゲレンデに黄色いテント張って、“そこの兄ちゃん姉ちゃん、その板ワックス塗ったらもっと気持ち良く滑れるぞ!ほれ貸してみろ、塗ってやっから”な~んて、世界中で言っていたいかな。(笑)

●インタビュー後記:
ワックスのビジネスとは、どういうものなのか?
今回お話を聞き、その行き着くところは、その発信者である人間性とか、道徳観にあるのではないか、と思えて来た。
ビジネスだから、売り上げをアップさせることは目標とされてしまう。しかし、その目先の数字ばかり見ていると、肝心のことがないがしろになりミスを犯す要因にもなりかねない。例えば、売りたいばかりに過剰なセールス・トークとなる。それが長い目で見たら痛手となるような過ちであったり。
大切なのは、使用するスノーボーダーたちが実際にマツモトワックスを使って、喜んでライディングしていることを想像すること。できるだけ正しいマツモトワックスのかけ方を丁寧に説明していくこと。実際にユーザーにその使用方法を伝えていくこと。一人ひとりの人間に深くマツモトワックスの良さを説明するということ。その結果、大きなビジネスになっていた、ということなのかもしれない。
今回のインタビューで自分はそんなことを考えたし、また本来ビジネスのあり方というのは、すべてにおいて発信者の人間性、道徳観の大切さに左右されるのではいか、と思った。

ワックス=滑るボードを作る、結果、喜びを与える、といういたってシンプルな方程式により、このワックス・ビジネスという市場が、まるで、まるで宗教家が布教するような活動をしていくかのようでもある。それぞれの教祖、さらにはお弟子さんがその良さを伝えていくのだ。これからも松本さんを慕い、そしてマツモトワックスの良さを理解した信者が徐々にだけど確実に広がっていくのだろう。

 

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