ガールズシーンの扉を開く/上田ユキエ

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リルのDVDプロデュース、verse viviaスノーボードの立ち上げなど、ガールズ・スノーボード・シーンで常に新しい扉を開いて来た。ライダーとして、プロデューサーとして大活躍を続ける上田ユキエの活力になっているものは? 上田ユキエの考えの真髄に迫ってみた、最新インタビューをお届けしよう。


Photo & Interview by Fusaki Iida

シーズンインの時、よくウィスラーに来ているけどその理由は?

ここ何年かはこの広いウィスラーで滑るというのが1つのルーティーンになってて、NFA(注:カナダ・バンクーバーに拠点を置くウェアー・ブランド)の撮影がちょうど雪の良い時に当たるんですよ。でも、NFAの撮影がなかった時でも11月、12月はよく来ていました。1週間でも1ヶ月でも時間ができれば来て、足慣らしをするとそのシーズン調子が良くなるので。

ウィスラーは初心に帰れるというか。あと一人で滑ってもレストハウスでゆっくり昼寝できたり、落ち着きます(笑)。日本にいると見られていることで落ち着かない気分にもなったりすることもあるし。たまたまいっしょにゴンドラに乗った女の子といっしょに滑ろうかとか、カイバース(注:トゥリーランができる有名なバックカントリー・エリア)で会ったスノーボーダーと意気投合していっしょに滑ったり。ウィスラーにいる方が自由な気分にもなります。
今年は雪がいいし、また1月か2月来るかも。

おっ、また来る!

以前、雪が良かったシーズンも11月来て、12月来て、また1月来て、2月も来てって、毎月来てた月がありました。日本で仕事とか撮影とかあったけど、ウィスラーのコンディションが良くて。現地とやりとりして「今、ウィスラーいいよ」と連絡受け「じゃあ、来週行く」というノリで。ウィスラーだと気楽に来れちゃう。今回も決まったの2日前ですよ。明後日のチケットって取れるのかな、って感じだったけど(笑)。

すぐに来れて、凄いところ滑れるところだよね。

そう、だからどこの国よりも寂しくないというか・・・、また来ると思っているし。外国っぽくないというか、でも外国って気分。

リフトに乗っている時間。この「静」こそ大切と考えているユキエちゃん。

一人で滑ることもあるの?

一人で滑ることも、好きというか、自分にとっては大事なことです。みんなとワイワイ滑ったり楽しく滑ることは好きだけど。
私子供の頃から、お母さんとお姉ちゃんといっしょに滑っているのだけど、昔って一人乗りリフトじゃないですか。だから小さい頃から一人でリフトに乗って考えたり、何も考えてなかったり、という時間がずっと人生の中で積み重なっていているんです。「静」と「動」で、リフトに静かに乗っている時間があり、激しく滑っている時間があって、その繰り返しだからいいのかな、と思うんです。私の人生の中でリフトに乗っている時間ってとても長いと思うんです。でも、それがあるから動き回っている時間がある。凄い大事な時間だと思います。

普段の生活でも同じことが言えると思うんです。「ユキエちゃん、よくそんなにパワフルに突っ走っているね。」と言われるけど、飛行機とか新幹線など移動時間も多く、そこが私にとっての静の時間なんですよ。で、一人で行動することも多いから、凄い自分の世界に浸って、次に行った場所でいろいろな人がいてワーっと楽しく行けるんですよ。

最近、ライディングで考えていることは?

ウィスラーに来ると特に思うんですが、どんなボコボコでもスイスイ行けるように練習してます。
忠(布施)と吾郎ちゃん(小松)と滑っていると、ボコボコしたところでスイスイ行っちゃうじゃないですか。自分は止まりながらで。「何なんだろう?」と。そうしたら「もっと飛び跳ねるようにフワンフワンって行くんだよ」って、凄い抽象的なアドバイスをされて。ニュアンスはわかって。自分は板に頑張って乗っかってる感じで、止まってしまう。でも、どんな斜面でもスピードも板が自分の身体の一部のようになっているように。ピョンピョン跳ねながら、ボコボコを吸収できるように滑りたい。みんな(小松吾郎、布施忠などユキエちゃんと親交の深いウィスラーを知り尽くしたライダー)と滑っていると必死で、ピョンピョンどころかとりあえず着いて行くのが大変。だから、自分一人で滑っている時には、流さないで一個一個ちゃんと滑ろうと。小さいところからやっていって、徐々にできるようになりました。ウィスラーだと、上がパウダーでもすぐ下はボコボコってケースもります。だから、自然にそうしたことを学べる環境があっていいですね。

今まで日本のスノーボード市場にガールズビデオはリルだけだったけど、今年はスローライフも出ました。どう思った?

業界自体が、女の子のDVDであろうが、webサイト、雑誌でも注目してくれて「ヤッター!」ってことですよね。
私もこれまでにリル以外の映像もやらせてもらってきました。種類はハウツーだったり、いろいろあるけど、実際男の人が女の子を使って作ってもらっているものって、今までにも今年の時点でもいっぱいあると思うんですよ。だから、私は誰か女の子ライダーがフィルム・カンパニーを作ってやった時に初めて「おっ!」と思うでしょう。男の子で言ったらライオがレッドアイズを作って、ヤス(佐藤康弘)くんがFC(ファーストチルドレン)を作って。今、また忠が新しいの(Heart films)を作っていたりとか、そういう動きいっぱいあるじゃないですか。私は自分が始めた時、女の子のそういう動きってなかったから、注目してもらえて恵まれていたと思います。自分たちも手探りだったけど、新しい何かできた、というものがあって。正直女の子たちもやり始めるかなって思っていたけど、そういう動きがずっとなくって。女の子の方がライダーも少ないし現実的に少し難しい部分もあるんだとは思います。

なるほど、そこは大きな違いだね。

だから、「出たけどどう思う?」と聞かれても、私は種類的には違うと思っていて。例えば私も3年連続でヤマケイさん(山と渓谷社)から出している女の子のハウツーに出演していたり、他にも女の子ライダーだけのビデオはいくつか出ていて、女の子ライダーを扱ってもらっているビデオは出ているんですよ。今回はジャンル的に、コンセプトとか似ているから、比べられると感じたことはあるけど。

こうやって女の子ライダーを取り上げてくれる動きをしてもらえるのは単純に活性化につながって「ありがたいこと」だと心から思います。女の子が出て行くのは嬉しいし、そういうメディアの1つですよね。

いつかわからないけど、誰か女の子のライダーがやり始めたら、そのとき初めて実感すると思います。その時が来たな、と。それはきっと、自分の足跡を自分自身で振り返れる瞬間なのかもしれない。単純に嬉しいと思う。相談されても「やりなよ」と言っちゃうだろうし。

私も始める時には他のプロダクションズの方に相談して、助けていただいたし。「そんなことまで教えてくれちゃっていいの?」っていうくらい親身に教えてくれました。

私もいろいろ人に教えるという機会が増えてきて、教えることで得られることって多いんだって感じています。人に自分が持っているものを閉ざすということは、自分を守ることじゃないと思う。みんなに交流もって自分が教えることは教えて、その分、何かを与えてもらって 自分も成長していけると思う。だからいつもいろいろな人たちと交流していきたい、と思います。

ウィスラーの大自然がライダーとしての上田ユキエを鍛えてくれる。

毎年リルの撮影やイベントなど精力的に活動しているユキエちゃんだけど、今シーズン楽しみにしていることは?

トリップすることが楽しみ。これまでアメリカ、カナダ、ニュージーランド、そしてヨーロッパで撮影を続けて来て、「私たちは海外でこんなふうに活動しています!」と見せて来たのもいいことだと思うんですけど、もっと日本に目を向けてみたいな。まだやりきれていないことの1つで。例えば車で東北まで行って、フェリーに乗って北海道に滑りに行って、そこでいろんなライダーと合流したりとか。そういうのって、自分がスノーボードを初めてやっていたことだから。それが今年の楽しみの1つです。

あと毎年ニュージーランドに行っているですが、みんな決まりきったところばかりに行く傾向があるから、リルでは毎年クラブ・フィールド(注:Tバー1つあるのがマシで、ロープ棟しかないようなローカルなスキー場)に行ったりしています。
リルでも3、4シーズン行っているのですが、車をレンタしていろいろなリゾートに行って。するとみんな「こんなところがあったんだ」って感激してくれるから。それが、海外リゾートの大きな楽しみ。リルの撮影という名目で、私も経験できるのはラッキーだし、みんなもそう思ってくれているし、そこで人間関係が深まり、こうして付属して起きることがいっぱいある。だからリルの撮影で行ったら、そこで画(映像のこと)を残したいと思うけど、そこで起こる経験が何よりも大切だと思う。

トリップで生まれたライダー間の絆がリルの楽しい雰囲気にもなるんだろうね。

凄い究極なことを言えば、スノーボードをしなくても生きていけるし、楽しいこと他にもあるけど。例えば海外に行くのって危険だから心配になったり、スノーボードに行くのも危険だから心配になったり、みんな不安でちょっと踏み出せない一歩があるじゃないですか。確かに日本にいるだけの方が危険じゃない、スノーボードをしない方が危険じゃない。だけどスノーボードもしないで自分のお家ばかりにいて、それでも何かある時にはあるし。そこでは見れない世界があるし、私たちは生まれてきて、いろいろなところに行けていろいろなところを見れる時代に生きているから、一回の人生で知らないよりは、私は知れて良かったと思うし・・・。私の回りの子たちもスノーボードして良かったとか、海外に出てみて良かったとか、ホント前向きな意見が多いです。だから、それを知らない人にも、別におせっかいで伝えたいのではなくて、やってて楽しいことだから伝えて、もっとこれを楽しみ人が増えて、盛り上がっていったらいいなあ、と単純に思うし。それを伝える立場にいるってことが、それをせさているんだと思う。

ユキエちゃんは新しい世界に一歩を進む勇気がある人だと思うけど、元々そういう子供だったのかな?何かそう思ってもなかなかできない人にアドバイスを送るとしたら何を。

子供の頃から行くタイプだったと思うんです。私、三人姉妹で一番末っ子なんですけど。
私は身体が弱かったんですよ。これはかわいそうな物語とか、そういうことで言うつもりはないんですけど。身体が一番弱くて、お姉ちゃんたちとか元気だったから。私と一個上のお姉ちゃんって、身体の大きさが全然違くて、お姉ちゃんはクラスで一番背が高くて、私は一番低いって感じだったから。
で、小学生の時、学校とか体育とか好きなのに、出れなかったり。海の近くの養護施設で生活した時期もあって、それで帰って来たら勉強はできなくなったけど(苦笑)、健康になったとお母さん凄く喜んでくれて、それでやれる時にやっときたいって意思が子供の頃に植えつけられていて、自分の体調で、体育でも出れる日と出れない日があったからやれる日にやっとかないと、休んだ日に「ああ、こないだもっとやっておけば良かったなあ」と、思うのが悔しかったから。だから、最初からそういうことを受け入れていたというか。
そのへんは今でも、悲しい時や辛い時、「またやれる時にやろう」と思う、ポジティブな気持ちを作ってくれたかな、と思いますね。実際にスキーとかずっとやっていたけど、お医者さんに「そういう方面に行くのは無理」と言われていて、またウチの親もあっけらかんとしていて「まあ、やりたいならやってみたらいいじゃない、それでダメなら諦めればいい」って。やらないよりはやってみよう、と。だから、まさか私が専門的なプロとかなれると思われていなかったろうし、なんかそういうのが人よりもハングリーというか、やれるならやるやる、って性格なのかもしれない。

ウィスラーで新たなる英気を補いユキエちゃんは、今年もパワフルな活動を見せてくれるだろう。

でも、今は身体が弱かったことは感じさせないね?

ない。でも、スノーボードを続けたいし、私毎日滑っていたいし、ちゃんと身体も維持するようにするし。
だから、それは自分を健康にいさせるプラスの方向に働かせてくれます。
スノーボードもそうだし、女性としてもそうだし。
スノーボードしているお陰で、体に気を使って、体型とか動けるように維持しようという気持ちがより強くなっている思うから。
スノーボードは心と身体を健康にしてくれるもの。だから、今だけやるとかでなく、私は一生続けていきたいです。

最後に今シーズンの豊富を。

スノーボードを履いている日をいっぱい作りたいです。
スノーボードは自分を違う生き物にしてくれる魔法の道具。バイクとか車とかエンジンは付いているものに乗っているわけでなく、それ(板きれ)に乗っているだけで、普通では得られないスピードを出せて体感できて、ジャンプした浮遊感を感じれて、トゥリーの中を動物のように駆け抜けるとか、そんなのスノーボードを履いていなかったらあり得なかった。板を履いたとたんにとりあえず飛び跳ねたくなる、違う生き物になる、そういうスノーボードに今年もたくさん乗り続けて、活動を続けていきたい。

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