エアー・フライ2位の心境/天海 洋

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夏の有明の夜空に世界のスノーボーダーたちが舞う! そんな凄い舞台で、ノー・マーク(?)とも言える天海洋が、あのオリンピック金のジャン・シーメンに続き2位に入るという快挙を成し遂げた。そんな洋選手に心境を聞いたら、あの大会の結果は「快挙」ではなく「順当」である、ということがわかってきた。高田馬場のあんみつ屋で聞いた、洋の本音を聞いてみよう。

フサキ(以下F):ビッグエアー2位おめでとう! でっ、滑る前ってどんな心境だったの?
洋(以下Y):そんなベタベタな(笑)

F:いやあ、それを一番聞きたかった。どういう精神状態で良い成績が出るのかなあ、と。
Y:いや、もう僕は安定してましたよ。

F:楽しんだ?
Y:楽しみましたね。だって俺は、ビックネームじゃないし、負けて当然だし、とか思ってたから。

F:ルールよくわかんないんだけど、2本目とかプレッシャーかかんなかった?
Y:うん、かかんなかったですよ。俺は日本人予選だけでしたね、その代わり予選はメチャクチャ緊張したけど。

F:それを通過しなくちゃいけないってことで?
Y:それもあるし、インドア-のインヴィテーションのコンテストは初めてだったからかも。特に1本目は硬くなってた。

F:どんな心境だったのその時?
Y:キッカーに呑みこまれていたから、笑ってみたりおしゃべりしたりとかして自分のペースを作ってたかな。ボーダークロスのときでもそうなんだけど話して緊張をほぐすタイプかも

F:結果を残すタイプだよね?
Y:そうですね。スノーボードうまくないけど、大会は強いかなってタイプ(笑)。自己分析すると。

F:それはなんでなんだろ?子供の時からそういうのあった?
Y:全然、俺スケートの大会とか出てたけど緊張しまくって技が1つも決まらなかったこととかしょっちゅうあったし。

F:なんで突然そういう風に結果を残すようになったの?
Y:なんでだろー?スケートの大会のときと違うことはスノーの大会は友達がたくさんいて面白かったことかな?あとはいい成績だした時のメンタルを思い返し自分>なりの緊張のほぐし方を見つけたからかな。

F:話すことによって緊張をほぐせる?
Y:けっこう、ほぐせますよ俺の場合。あと最近よくやっているのが寝てることかな、大会中に。1度リセットされた感じで体が軽くなる。

F:一時期、ボーダークロスで名前あがったわけだけど、ボーダークロスで結果を残すってのも狙ってたわけ?
Y:ボーダークロスは名前を残すっていうよりも、ただ賞金を稼ぎたかった(笑)。というか、自分が満足に動ける活動資金がなかったから、ボーダークロスをまわったわけで。そうしたらメディアに注目されてこんな風になっちった(笑)。でもボーダークロスは好きですよ。

F:それはパイプとかは好きじゃないっていうか。
Y:パイプも入るんだけど大会はちょっとね。昔は全日とか行きましたよ。だた俺のホームはニセコだからパイプは雪で埋まっていいコンディションを保つのが難しいんですよ。それだったらフリーランしてるほうがいいし、キッカー作りにいったほうが面白かった。またその頃のハーフパイプ事情はプロになりたい人たちが必死にパイプをハイクしてるからそれについて行けなくなっちゃってちょっと距離をおいたって感じですか。もちろん僕にもプロになりたい気持ちはあったけどそこまでしてはなりたくなかった。そんなときにボーダークロスの存在を知ったんです。昔天神平に居たときにBXの草大会をやっていたんですよ、コースを作ってる人も友達で結構かわいがってもらったから結構いい思い出があってそれがマスターズの走りなんですけど。それから数年がたってからプロ、アマ関係なく賞金をだすようになったからメチャクチャ燃えたし、ハマッタ。そうしてハマっていったらプロ制度ができて今の俺がいるって感じですか。

F:ボーダークロスって大きな山でガンガンフリーランしてないと勝てないっていうイメージがあるけど、洋君の活動の山って何処だったの?
Y:知ってるくせに(笑)

F:え、知らないよ(笑)
Y:僕はニセコです。

F:へー。ニセコなんだ(笑)
Y:(笑)

F:ボーダークロスの天海洋がビックエアーでいきなり2位になっちゃった。優勝がジャン・シーメン。その下には、いろいろビッグネームの強豪をいたわけだけど、2位に入った戦略ってなんだったの?
Y:戦略はないですよ。

F:コソ練してたの?
Y:フッドでしてたけど。

F:ワンメイクの?
Y:うん。

F:それが大会でやったバックサイド・ロデオなの?
Y:フットでは一度もしてない(笑)今年3回ぐらいしかしてない。

F:え!?
Y:ほんとに。

F:それじゃあ、フッドの時はなにしてたの?
Y:フッドの時はバックサイド・ロデオ一発もしてないですよ。スイッチ・セブンとかブラインド・セブンとかずっとやってた。

F:本当?
Y:でも、大会でキッカー見たら、スイッチで降りれなかったのね、斜面を(笑)。早いキッカーだったから。だからスイッチはもうあきらめた、とか思ってじゃあブラインド・セブンだ!とか思ったんだけど、ブラインド・セブンも立てるけど、まだそんなに完璧じゃなくて高さがポーンとでないから、きっちりこないなーと思っていて、キッカーも高さが出せないと外人とかに勝てないし。外人はそのキッカーのマックスの高さで技を出してくるから、だったらもう540ぐらいでデッカっく行ったほうがいいかなって。

F:それは自信あったんだ。イメージはあったわけだよね
Y:うん。そうそう。あれはー・・・できるね。できるけどバックサイド・ロデオはもうすたれてるっていうか一回ブームが去った技っていうのがあるから、それが凄くコンプレックスぽくて、なるべく出さないようにしてたけど。ただその時は凄くツボに入ったし、ランディングする前に客が「ウォー!」ってわいてるのが聞こえたから「あー、もうこれはこれで行くしかないなって」。自分もいいジャンプができてる手ごたえがあったから。でも逆にいうと、その大会では他の技は使えなかったからそれで行くしかないなって。もうネタがないから、あとはもうデカくいくしかないでしょ!みたいな。

F:いい結果でた時って「やったぜ!」みたいな感じ?「俺は別にボーダークロスだけじゃねんだゼ!」みたいな。
Y:今はそうですよね。あとは違う風にどうやって見せていこうかなぁーって、作戦を立てて。

F:え!どうやって見せていくの?
Y:それは企業秘密です。ここでは(笑)。

F:なるほど。
Y:オフレコならいいますけど。

(その後、オフレコで天海洋の今後の戦略を披露。僕がその話しで感じたことは、凄い考えているなあ、ってこと。やっぱり結果を出すライダーは考えて行動している。それ当たり前だけど、大切なんです!)

F:じゃあこういう質問なら答えるかな。いつも誰もやってないことをやろうと思ってる?
Y:今まではあまり思わなかったけど最近は結構考えるようになったかな

F:ウチのホームページ見てる人って上達思考強い人が多いいんだけど、天海洋の上達のモットーみたいなのってある?
Y:楽しむ。できない気がするときはしない。ムキにならない。

F:ケンカしない。
Y:そう。そういう時は違うことをやる。練習の仕方的にはキッカーだったら抜けが8割の割合で全部決まると思ってるから。抜け8割でランディング2割ぐらい。抜けしか考えない。

F:抜けに集中してんだ。
Y:抜けですね。空中のフォームとかは後からついてくるものだから。抜けの角度とか、自分の体の投げ出し角度とか、入る前のラインとか。そこをすんごい意識してる。キッカーは。一発デカくコケた時とかはもうやない。その日は。もうダメージが残っちゃってるし、メンタル的にも落ちてるのがわかるし。そういう時はいい演技ができないってわかってるから。自分の精神状態を前に持っていかないと。

F:なるほど。ちなみにボーダークロスは?
Y:ボーダークロスは本能的なものが多いいですね。5人でバンク入いったときとかラインとかひらめいて見えちゃう。ここだ!とか線が見える。

F:ここが一番早いと。
Y:うん。ここがあいてるラインとか。

F:なんでそういう能力が身についたんだろ?
Y:普通に滑ってるからじゃないですか。ボーダークロスに関しては。

F:ある意味度胸があるのかも知れないね。
Y:シュートとか滑るのもラインが必要でしょ?自分の中で。見えてないと駄目だし。ボーダークロスに関しては滑る能力がちがうのかな。だから実践でそういうラインが見えたりする。

F:なるほど
Y:なんだろうな?ラインが見えるって。

F:精神力とか鍛えてる風にはみえないけどな(笑)。
Y:やってないですよ(笑)。でも、俺なりに調子悪い時も勝てるツボにもっていくようにしてる。こういう心の気持ちだったら、行けちゃうってのが過去でわかるから、過去でいい結果を残せたときのイメージをすごく大事にしてる。

F:そういうことってどっから学んだの?
Y:うーん。本能かなあ。

F:ちなみに尊敬する人は?
Y:クイントン・ロビン(注:ニュージーランド人のライダーで日本のニセコを愛す)ぐらい。あいつは俺が白馬にいる時だから19歳の時から、なぜかあいつが俺のそばにいるんですよね。俺がこもる場所こもる場所にいるんですよ。

F:クイントン・ロビンスの凄いところってどこ?
Y:山の楽しみ方を知ってるとこかな。遊び方一番うまいんじゃないの?

ここで、天海選手のマネージャーとも言える? チューンナップ・ショップの伊藤氏が乱入! (伊藤氏のインタビュー参照)

伊藤(以下I):見る機会があるといいんですよ。うまいよー。
Y:てか、俺が一番見てほしいのはフリーラン!俺のフリーラン見てほしいよ。普通の人に。

I:危機を回避する能力、っていうのかな。他のライダーにはないものがある
Y:そういうのフリーランでしょ。

I:巻き込まれた時どうやって逃げていくか、とか
Y:技術的なことを言うのだったらリカバリー能力じゃない。

F:リカバリーも滑りの一部になってるんだ。
Y:うん。

I:他の人が突っ込んでいってるのにこいつだけ突っ込んでないから。
Y:だって怪我したくないジャン。

I:いやーみんなそう思ってるだろ。
Y:だって俺、このスピードで突っ込んだら絶対怪我するっていうのがあるから。自分のマックス以上はやらないし。

I:自分のことをよく知ってるんだよね。
F:自分のことをよく知ってる人は上達もうまいんだよ。
Y:あっ、そうかもしれませんね。

I:あと、人の話をよく聞いてる。
Y:聞いてる。

F:よく知ってるもんね。いろんなこと。
Y:知ってるかなぁ?

F:子供っぽい顔して頭いい。純粋でよく聞いてるっていうか。
Y:ああ、純粋ぶってますね。

F:純粋なんだよ。
Y:いや、結構したたかですよ(笑)。最近、野心があるかな。

F:洋君の野心って何?
Y:なんでしょうね?安定した生活?わかんない。今は嫁さんとか子供をどうやって安定して住ませようみたいな。

F:嫁さんいないでしょ?
Y:うん、これから。楽しく子供をどうやって育てようかなーって。

F:今期の目標は?
Y:大会以外の写真をたくさん残したり、ビデオ撮ったりしてメディア系をもう少しがんばる。

F:雑誌いっぱいでてるじゃん?
Y:そうなんですけど、大会の写真が多かったり、腑に落ちない写真が使われてたりするので、もっとクオリティーの高いというか見てる人を納得させれる写真が残したい。

F:万物に認められたいと。「洋はすげーよ」と!
Y:そうですね。

F:洋君って、自分の意見しっかり言うよね。
Y:そうかもしれない、インタビューとかで俺が喋りづらいことガンガン聞いてくるから考えるようになった。)

F:そういえば、大会かなんかでガーンって言っちゃって凄いことになったよね。あれは、何だっけ?
Y:あれは全日本(JSBA)ですね。しょーもない運営に対してこの大会はダメだねって、言っちゃった。

F:どこがしょーもなかったの?
Y:いやー、もう全部ですよ。運営の仕方とか。誰一人納得してる奴いなかったんじゃないですか、選手は。しかも、運営してる側も悪い気してるんじゃないかな?

F:スケジュール通りいかないとか?
Y:それもあるし、ボーダークロスなのに再送とかあるし、わけがわからないことが多すぎた。こんな大会でプロを決めるなよなって感じだったから。

F:その時は、洋君優勝したの?
Y:2位だったの。だから俺は1位になって表彰台でマイクパフォーマンスで言いたかったけど、2番だったからマイク奪って言った。DJが知り合いだったからマイク借りて。

F:実際、なんて言ったの?
Y:なんて言ったかな?「今日の大会はもう最悪でした」って。

F:いやあ、凄い。ひじょうにプロレスラー的でおもしろいけど。
Y:その日はみんな「よく言った!」とか「ウォー」みたいな感じだったけど2日後とかにあったら、「洋君ちょっとやばいこと言ったんじゃないの?」みたいな。

F:なんで?だったらウォーって騒ぐなよって言いたいよね。
Y:アマチュア最高峰の大会だったけど、その前から俺は第一人者っぽい「天海洋は凄い!」っていう、一番とって当然みたいな風に見られてて、俺がボーダークロスを引っ張るんだなっていう視線は感じてたのね。それでボーダークロス一期生の大会だったのに、「なんでこのしょうもない大会?」みたいな感じで、コースもしょぼくて全然抜けなくてスタートしたらそれで順位入れ替わんないし、運営も最悪だし、「これでどうやって順位きめられんだ!」って。そういうことみんなわかってたから
俺は言いたかったから言った。

F:なるほど、じゃあ洋君最後に夢を教えて!
Y:プロになってスノーボードがしやすい環境になったのでこれからは自分のスタイルを追及していきたい。トッリクとかも個性を出して自分らしさを探していきたいです。将来的には50歳過ぎてもスケート、サーフ、スノーボードをやってる親父になりたい。

インタビュー後記:
天海洋プロとインタビューして、日本人にもおもしろい奴が出てきたなあ、と思った。こういう「素直な度胸」が大きな仕事をやってのけるというような予感がした。12月に東京ドームの大会があるので、むろん出るだろうと思っていたが、ファン投票制度により惜しくも落選していた。ひじょうに残念である。オレも洋くんのように本音を言おう!「こういう奴を出さないとダメだよ!」「ニッポンのスノーボーダーが世界に飛び出していくためには、結果を残す可能性がある実力者を出さないと!!」「ファンのみなさん目を覚ましてください!!!」

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