伸身抜重と屈伸抜重

広告 five  

ターンには伸身抜重と屈伸抜重がある。今のスノーボードというのは、北米ビデオの影響からか、ぶっ飛び、トリック、クールなどがキーワードだから、地味であるターンということにこだわった堅物のハウツーはあまり雑誌で見られなくなった。だけど、10年ほど前、まだマック遠藤氏がスノースタイル誌でハウツーをやっていた時には、ターンの魅力を掘り下げてくれる企画をよく目にした。僕なんかもかなりマックさんに影響されたし、今でも考え方とか尊敬している部分もあり、また時間があったエコーバレーの方にごあいさつに行きたいが、ともかくマックさんが、伸身抜重と屈伸抜重の必要性や大切さをスノーボード界で初めて強く訴えた最初のスノーボーダー。当時はそんなハウツーを理解しマスターした僕だけど、時間と共にあまり伸身とか屈伸とか考えずにスノーボードをやっていた。言い訳すれば、場面に応じて勝手に自分が2つの抜重ターンを使い分けていてやっていたから、この手の知識や練習が置き去りになっていたのだ。

ところが先日、ウィスラーでのクラブ活動中にあるクラブ員から、どこで立ち上がってどこで沈み込めばいいのか質問されちょっと迷ってしまった。僕はなんとなく、その時、片方の抜重ターンだけを説明してしまったのが、よくよく考えてみれば、ターンには伸身抜重と屈伸抜重があり、その両方の違いとまた利点を説明し、例えばどんな状況でどっちの抜重ターンをするか説明すべきだったのである。

そこで僕は、かなり大雑把な説明だけど、ターン後半に立ち上がりながらターンする屈伸抜重は、緩斜面で加速させるのに有効と言い、また沈み込み立ち上がり動作のメリハリある屈伸抜重は、急斜面で有効と伝えた。例えば超急斜面でジャンプしながら行うターンは屈伸抜重である、と。
こんなことは頭ではなかなか理解できないので、実際に雪上では、ジャンプ・ターンとビテリー・ターンをやってもらうことにした。

広告

ジャンプ・ターンは、ジャンプしながらエッジを切り替えるターン。例えば、ターン後半にトゥ・サイドに乗っていたら、そこから勢いよく立ち上がってそのきっかけでジャンプし、ジャンプ中にエッジを切り替えヒール・サイドに乗り、そこからターンを続けて行き、絶えずエッジの切り替え時にはジャンプするというものだ。そうすると、ターン前半部分では立ち上がる動作になり、後半になるとヒザ、足首を曲げて身体を小さくして行き、結果的に伸身抜重になる。言葉だけ聞くと難しく聞こえるが、結局、立ち上がった勢いで抜重し、エッジを切り替えるのだから、初心者時代からお馴染みのターンである。

ビテリー・ターンは主にアルペン・ライダーのテクニックだけど、ターン中に片方の手を雪面につけ、もう片方の手は上げて行うというもの。身体を雪面に倒すお馴染みのポーズは、結構、多くの方も見たことがあるに違いない。このターンは、前半にできるだけ身体を小さくして、後半にしたがい足を伸ばして行き、その立ち上がりながら生まれたエッジングのホールドで思い切って体を雪面の方に身体を倒しつつ、後ろに来る手を雪面につけてターンするというもの。エッジ・ホールド感のいいハードブーツと違って、ソフトブーツではかなり難しいけど、パウダーなど雪質がいいとメイクできる。

ハウツー天使には似合わない(?)かなり理論的な話になって来たが、両方のターンを意識して練習することで、ターン技術は幅広くなり、しいてはオールマウンテンを楽しめるスノーボーダーになれるのだ。機会があれば、3分ハウツーなどでもやってみたいが、とりあえずこの伸身抜重と屈伸抜重のターンの利点などを最後に明記しておこう。

伸身抜重の使いどころ
急斜面を積極的に滑るジャンプ・ターンで威力発揮。立ち上がりと沈み込みのメリハリがあるので、初心者時代に抜重を覚えるのにも最適。ジャンプでエッジを切り替える技術を覚えればコブでも有効だ。ちなみにオーリーというのも伸身抜重の動き。

屈伸抜重の使いどころ
常に雪面抵抗を受けるターン後半に立ち上がるターンで、緩斜面でグイグイ加速させるのに有効。またコブでは頭の位置を一定に保ち、脚の曲げ伸ばしで安定したターンを作るが、そのような動きは屈伸抜重である。ボーダークロスのコースにあるバンクを滑る技術も屈伸抜重の動き。

 

広告