【コラム】NEXT GENERATION

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文:齋藤 稔

今年のアテネオリンピックを見ても若い世代の活躍がひじょうに目についた。オリンピック以外でも女子プロゴルフの低年齢化は信じられないスピードで進んでいる。現在いろいろなスポーツで主力となり世界と戦っているのは 10 代後半から 20 代前半の選手達。そしてベテランと呼ばれているのが 30 代の選手だろう。このまま見ると若手が育ってきて世代交代が進んで良いことだとなってしまいそうだがちょっと待ってほしい。人気スポーツでの 10 代や 20 代前半ははっきり言ってまだまだこれからの選手がほとんどでチームの主力となるのは圧倒的に 20 代中盤から 30 代前半の選手達だ。この年代の選手は持っているパフォーマンスだけでなく、これまでの経験という大きな武器を身につけ戦っている。では 10 代後半や 20 代前半の選手が活躍する種目ではどうだろう。この現象は若い世代の力がついてきたと言うだけでなく、その種目の競技人口の減少を表しているとも言えないだろうか?

例えば女子ゴルフ。 10 代の選手の活躍が目にとまるようになったのはここ数年。それまでは主にベテランと呼ばれる一握りの選手が国内のトップを守ってきた。つまりベテランから中堅・若手という世代交代を通り越して一気にベテランから新人に世代交代が起きてしまったのだ。 20 代の選手の極端な減少、あるいは活躍の場のなさは競技自体の縮小を引き起こしかねない。つまり「これから頑張っても 10 代の連中には勝てないんじゃ・・・?」と競技としてのスポーツをあきらめてしまう人が増えてしまうこともあり得るのだ。現在の 10 代選手は子どもの頃から英才教育を施された選手達で、これに対し、やはりスタートするのが送れてしまった選手は間違いなく出遅れてしまうと言うイメージがある。言い方を変えればエリート教育無しではプロスポーツでやっていけないというマイナスのイメージでもあるのだ。

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スノーボードではどうだろう。実際ベテランと呼ばれ現在でもクロースアップされているのはライオをはじめ 30 代に手が届き始めた歴の長いプロ達である。それでは競技ではと言うと圧倒的に 10 代選手の勢力が大きい。間の 20 代の選手でビッグ・ネームというとなかなかすぐにはあげられないと言う人も多いのではないだろうか。本来競技人口が一定の増加、あるいは新規参入を含めた一定数を確保しているのであれば、 10 代から頑張ってきてテクニックだけでなく、活躍するための環境や様々な経験が糧となり肉体的にも精神的にも最高の状態にある 20 代の選手というのが出てきても良いはずなのだが・・・。そうやってみてみると空白の世代があるようにも見えてしまう。実際 20 代からプロを目指しても活躍できる年数は短いという現実。そのために 30 を目の前に競技を辞めてしまう人の多さ。そして競技として年間多くの金額をつぎ込む人口が減ればスポーツとしての発展も足踏みが起きてしまう。実際一昔前まではかなりのステータスとされていたスポーツが現在ではそれほど多くの愛好者を獲得できずに苦しんでいるとの話も珍しくはない。

別に若い世代がドンドン伸びてくるのは悪いことだとは思わないし、むしろプラスになると思う。ただ、極端に進んでしまうとあまり良い方向には行かないのではないと思うのだ。若くなければ活躍できない、若くなければ楽しめない、そんな風な見方にはなってほしくないだけだ。現在スノーボードの人口は初心者の割合と上級者の割合が減ってきてその間のみが数多く存在するというバランスの悪い状態になっている。競技が全てとは言いもしないし、思ってもいないが、もっと新規の参入者を増やすための努力と辞めてしまった人がもう一度スノーボードに帰ってくるような動きを作らないとこの先、スノーボードの発展はないとも思う。新規参入者として若者をターゲットに様々な動きがあるのも事実ながら、スノーボードを辞めてしまった大人たちの回帰もそろそろ動いていかなければならないだろう。本当の意味でのライフスタイルとしてのスノーボードが今必要とされ、問われているのではないだろうか。

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