【コラム】バッジテスト改訂について

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文:青木貴則

バッジテストという存在を知っている人はどれくらいいるのだろうか? インストラクターを目指している人であればこの存在を知らない人はいないと思うが一般のスノーボーダーははたしてどれほどの人がこの存在を知っているのだろう。

バッジテストの詳細についてはJSBAのホームページにて確認してもらうこととして、ここでは簡単にバッジテストの概要について紹介しよう。

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バッジテストとは滑走技術を評価するためのシステムで、1級~5級の5段階にわかれている。滑走種目は級によって異なるが、ロングターン、ミドルターン、ショートターン、フリーラインディング、エアなどがある。最も簡単なのが5級で、1級が最上位の級となる。1級取得者にはC級インストラクターになるための資格が与えられるため、インストラクターを目指す人にとっては必ず通らなければならないものとなっている。

さて、このバッジテストは今シーズンからいくつかの項目が改訂された。まず1級の種目からロングターン(ドリフト)が消え、代わりにエアーが入ってきた。次に1級、2級の総合滑走がフリーラインディングという種目に置き換わった。この変更では、今までの総合滑走という滑走技術の評価に加え、トリックやビッテリーターン等が加点要素として考慮されることになった。

今回の改訂によってトリックやエアなどフリースタイル・フリーライディングの要素が考慮されることになったというのはとても良いことだと思う。しかしながら、このトリックやエアーの導入にあたって、いくつかの問題点を指摘することができる。

一つめは、検定員はフリーライディング中のトリックをきちんと見極められるのか?ということである。私の手元にはインストラクター講習会でもらった資料があるが、この資料によると「フリーライディングで考えられる主だったトリック」として、フラットジャンプ、オーリー、スイッチ等が書かれてある。この程度のシンプルなトリックであればさほど問題は生じないだろう。それじゃぁバックサイドノーズプレスをしてからフェイキーになったとしたらどうだろう。スイッチしてノーズに乗りそこから180したらどうだろう?検定員はこれらのトリックを正しく見極められるのだろうか?うまく回せなかった、スイッチした時にバランスを崩していたと勘違いしないだろうか?
トリックはやったら必ず加点されるというものではなく、完成度が高いものについては加点、失敗した場合は減点にもなりうる。となると、検定員の見誤りによって、せっかく完璧なトリックだったにもかかわらず減点にされてしまうという事態が起き得る。これで合格だったのが不合格なんてことになったらとっても悔しい思いをするにちがいない。

検定員に関しては今回の改訂による移行講習が行われている。そこである程度のトリックの解説は行われたようであるが、トリックなんてものは名前のきちんと付いたものあれば自分であみだしような名も無いトリックというのもある。検定員にはそのようなトリックでさえも運動の性質を見極めて正しいジャッジをすることが求められる。
JSBAの方でもトリックの種類による点数化だけではなく、運動の性質という視点からトリックの点数化を行っていくべきであると考える。

二つめは、受験者の模範となるエアーを飛べるインストラクターが少ないということである。B級インストラクター以上の資格を持っている人はインストラクター検定の時に必ずエアーを飛んでいるはずである。しかしながら、この間参加したインストラクター講習会ではほとんどの人がエアーを飛べてないかった。たった50cm位のエアー台、普段パークで遊んでいる人からみると段差?とも思えるくらい小さなもの。さらに助走も15mくらいで、ゆるーい斜面であったにもかかわらず多くの人はきちんとランディングできずにコケていたのである。ビビッたのか、中には飛ばずに横を滑ってくる人さえいた。こんなんで良いのだろうか?

今いるインストラクターの半数以上はアルペンライダーであり、その多くはあまりエアーをしたことがない人のようである(少なくともインストラクター検定では飛んでいる)。しかし、インストラクターであり、バッジテストにエアーという種目が入ってきた以上、アルペンであれフリースタイルであれインストラクターはみなエアーができる必要がある。しかし現状はそうではない。JSBAはこのような状況をどう考えているのだろうか?

バッジテストにフリーライディングの要素を取り入れることはとても歓迎できることであるが、それをちゃんと見極められる検定員、デモれるインストラクターがいなければとても中途半端なシステムになってしまう。JSBAはこれらの整備をきちんと行ってこそ、初めて「バッジテストのシステムが改訂されました」と胸を張って言えるのではなかろうか。種目を見直すというのも大事ではあるが、それに伴う環境もきちんと整備する必要があるということを忘れてはならない。

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